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ミステリー小説、書く!!!

ミステリー小説です。 毎週1回のペースで更新しますので、良かったら読んで感想をください。

スキマ時間にはビジネス書を「聴く」。オーディオブックのFeBe

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「不和の美」-8



 弁護士には守秘義務がある。が、彼の人柄が信用できるのと、場合が場合だけに弁護士は小声になり、皺が増えてきた顔を探偵の耳元へ近づけた。

「昭雄君は町で材木加工会社を経営していましてね。けれどもあの町の財政は見ての通りで、仕事を広げようと試みているんだが、うまくいかなくてね。結果的に借金が増えて行っているんだよ。それで義男氏にお金の工面を幾度か頼んでいるんだが、義男氏はああいう人柄だからね。息子には厳しかったんだ」

「ああいう人柄? 俺は会ったことがないですから。もっと具体的に説明してくれますか」
 
 事件への関心が強いせいか、ぶっきらぼうに言葉を淡々と探偵は並べた。

 いつもの事だ、と事件に対する彼の姿勢をしる古川は、少し被害者の広がを頭の中で簡素にまとめてから口にした。

「粗暴と言ったら失礼にあたるが、その言葉が一番近いかもしれない。酒は豪快に飲むし、食に関しても年齢を感じさせないほど進んでいた。色という方でも豪快でね。外に女性を作っては幾度も泣かせていたのを、わたしも見ているよ。
 仕事は優秀そのものだったよ。誰よりも働いたし、寝るのが惜しい、と口癖のようにね。凄い人だった」

 故人をおしむように、悔しげに唇を弁護士は噛みしめた。

「なるほど。息子には自分で金の工面をさせたかったわけですね。それができなければ、経営者失格だと思っていたのでしょう」

 洞察力といったものがずば抜けている探偵は、人柄を少し聞いただけで、被害者を理解したように、親子の関係性を見抜いていた。

「喧嘩も1回や2回じゃなかったからね。それで三田警部は昭雄君を任意で取り調べているんだろ」

 状況が少しずつつかめてくるにつれて、真田春也の中で高揚感が強くなった様子で、自然と笑みがこぼれていた。彼にとって事件捜査とは嗜好品なのだ。どんな快楽よりも、事件の謎や背景が解明されていくことに、喜びを覚える探偵であった。

「わたしは何も知らないんです。どいてください」

 駐在所の玄関で、女性の喉から血を出すような、疲れて枯れた声が上がった。

「もう、いいかげんにしてください!」

 怒鳴り声と共にマスコミを乱暴にかき分けで出てきのは、やつれた表情で猫背の女性であった。肩までのうねった髪と生え際の白髪が、さらにそのやつれた印象を強くした。

「岡本美枝子さんですね。ヘルパーの」

 弁護士を介すこともなく、春也はズカズカとヘルパーの元へやってくるなり、いきなり声を掛けた。

 若い男がマスコミの1人だと勘違いした岡本美枝子(53)は、明白な不機嫌を顔に浮上させた。

「わたしはなにもしてません。話すことはありませんから」

「被害者を発見した時の様子を聞かせてください」

 自分が勘違いされていることなどお構いなしに、自分の聞きたい用件だけを口にして話を進めようとする探偵。

「彼女は第一発見者です。取材に答える義務はありませんよ」

 弁護士バッチをつけた男の登場に、マスコミはひるんだ。

「話は場所を変えて」

 と、弁護士は堂々とした態度でその場を沈静したのだった。

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プロフィール

HN:
富士島
年齢:
39
性別:
男性
誕生日:
1986/01/06
職業:
介護職
趣味:
小説、漫画、映画、PC、スマホ

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