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ミステリー小説、書く!!!

ミステリー小説です。 毎週1回のペースで更新しますので、良かったら読んで感想をください。

スキマ時間にはビジネス書を「聴く」。オーディオブックのFeBe

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【殺人パーティ】

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『殺人パーティ』 

 事件が発生したのは、ニューヨークセントラルパーク沿いにあるアッパーイースト地区の一室で起こった。  

 このアッパーイースト地区は、ニューヨークの世間一般の金持ちが住む地区であり、憧れの場所となっていた。その一角にある家の一室、ホームパーティ中に、主催者のジェームズ・バニングスが殺されたのだ。  

 すぐにニューヨーク市警の警察官が駆け付け、家は封鎖され、パーティの出席者全員に事情聴取が行われた。  

 被害者ジェームズ・バニングスは証券会社に勤め、社交的でこうして知人を集めたパーティを主催するのが趣味のような、人のいい人物であった。

 彼の遺体はキッチンで発見され、背中からキッチンにあった肉をさばく長い包丁で刺されており、心臓まで一直線に背中を貫いていた。

 キッチンに当時、招待客は出入りしておらず、カクテルを作りにジェームズが一人、キッチンに居た。

 招待客の人数は20名。室内に荒らされた形跡はなく、金品の紛失もなかったこと。招待客が不審な人物を誰一人見ていないことから、20名の客の中に犯人がいると殺人課の刑事たちは考えた。

 そんな中、招待客たちは声をそろえて、犯人はメリッサ・キャンベルだと主張した。

 メリッサはジェームズの同僚である。しかし社内では有名なほど二人は不仲であった。不仲のきっかけは、彼女が彼の顧客を奪ったというのだ。証券会社としては、利益をあげることが最大のノルマとされているが、メリッサはあくまで噂だが顧客と肉体関係を築くことで、彼から顧客を奪ったというのだ。

 この一件から二人は度重なる口論をしている。これは同僚たちが何度も目撃していた。

 犯行時刻、キッチンの方向から「メリッサ、やめて!」という声が聞こえていた。その後、駆け付けたジェームズの同僚が遺体を発見していた。

 この声が誰だったのかはわからないが、メリッサが有力な容疑者となった。

 刑事たちはパーティに出席してたメリッサに事情を聴くと、犯行時刻、彼女はトイレに居たというが、誰も目撃者はなく、遺体発見後の混乱から、彼女がトイレから出てきたのを目撃した人物をいなかった。

 アリバイがないことから、彼女を連行する刑事たち。

 しかしそれを止めたのは、小柄な猫背のアジア人の青年であった。

「彼女は犯人ではありません」

 小声の流暢な英語で刑事を止める青年は、織田レイヴと名乗り、顔からしてハーフと思われた。

 アジア人の小柄な男が生意気な、と黒人の大柄な刑事が彼をどかそうとするも、彼はのらりくらりと太いその腕をかわす。

「彼女を連行するのは冤罪を招きます、やめてください」

 無表情な彼の言葉に、不気味なものを感じた刑事は、彼女が犯人ではない根拠を彼に尋ねた。

 すると織田レイヴはトイレの方へのっそりと向かうと、小さいビニール袋を持ってトイレから出てきた。

「彼女は生理中です。トイレに居たという証拠になるのではないですか?」

 刑事が怪訝そうにしていると、メリッサは赤面して青年から袋を奪い取り、バックの中に押し込んだ。

「誰か違う人物のものかもしれないではないか」

 そういう刑事の言葉に青年は言い返す。

「その織物はまだ暖かい。つまりさっき彼女が言った通り、トイレに居たということになります。織物は一つしかなかったので、他の方のものではないと思われます。調べていただければわかると思いますが」

 警察官たちがすぐに他の女性たちに聞くと、確かに生理中の人物はいなかった。

 だがそれでアリバイが成立したとは考えられなかった。もちろん青年もこれでアリバイが成立したとは考えていなかったのか、細い指を一つ立てて、刑事にいう。

「事件現場に基本はあります。現場に一度戻りましょう」

 というと青年は制服警官の静止をのらりくらりと避けて、キッチンへと到達した。

 ジェームズの遺体はまたそこに横たわっていた。まだ鑑識が遺体や事件現場を捜査していた。

 英語でまくしたてる捜査官を横目に、現場に抜き足で入る青年は、眼を見開いてうつ伏せに倒れているジェームズを見下ろした。背中には肉用の長い包丁の柄が立っていた。

「犯人は人体に詳しいようです」

 遺体を見るなり青年は言った。

 刑事が根拠は、と言いたげに青年を見ると、青年はすぐに答えた。

「通常、人は人を包丁で指すとき、刃を縦に持ち、突き刺します。もちろん腹部や背中の柔らかいところならば、刃は通るでしょう。しかし今回は心臓めがけ一突き。つまり肋骨の間を抜けて刃を横にして突いています。骨を断つのが難しいと理解している人物が犯行を行ったということです」

 口ばやに言う青年。

 刑事が視線で鑑識に説明を求めると、鑑識捜査官は、青年の説明が正しいと頷いた。

「ならば犯人は限られてきます。人体、あるいは動物の肉体構造を勉強したことがのでしょう。経歴を調べればすぐに分かります」

 刑事は急ぎ、制服警官に全員の経歴を調べるように命令した。

 レイヴは遺体をじっと観たあと、急にキッチンを出てリビングに移動した。

 そこには待機を命じられた招待客たちが待機していた。

「刑事さん、僕もこの場所で声を聞きました。メリッサ、と確かに声は言っていました。ですがさっきも説明したように、メリッサは犯人ではありません。これは故意にに誰かが犯人をメリッサにしたてようとした、基本的心理作用を利用したものです。メリッサが犯人だと大声で叫ぶことで、自分から注意をそらすためのトラップですよ」

 まくしたてるように言うと、今度、アジア人の男は2階へと駆け上がっていく。

 刑事たちも慌て、現場を荒らされるのではないか、と絨毯がしいてある階段を駆け上がった。

 彼は被害者ジェームズの寝室に居た。

 特に物に触ることもなく、じっと部屋を見回していた。

 几帳面な性格なのだろう、ジェームズの部屋は綺麗に整理されていた。

「刑事さん、クローゼットを」

 階段を駆け上がったことで肩で息をする刑事に、クローゼットを開けろ指示する。

 刑事はムッとしながら若い制服警官にクローゼットを開けるよう、太い指で指示をした。

 クローゼットにはスーツ、普段の衣服、家で着る衣服がキチンと整理されており、足元には靴も綺麗に整頓されて磨かれ並べられていた。

 すぐにレイヴは刑事の顔を見た。

「刑事さん、ジェームズは同性愛者ですよ」

 訝しげにレイヴの顔を見る刑事は、

「何を根拠にいうのかね」

 と捜査を混乱させる彼の言葉に不機嫌な対応をした。

「靴を見てください。綺麗に揃った靴に違和感を感じませんか?

 刑事がいくつも並ぶ革靴を見ると、先がバラバラに並んでいる。

「サイズが違う靴がいくつも」

 ハッとした刑事が並んだ衣服を何着か見ると、サイズが違う服がいくつも並んでいる。

「この家にはもう一人、男が暮らしていた」

 人差し指で刑事を指し、レイヴは頷いた。

 次にレイヴは寝室を出て向かい側の書斎に入る。

 無数の金融関係の本が並ぶ部屋の真ん中には高級家具と思われる木製のデスクが置かれていた。

 デスクの上も綺麗に整頓されていたが、ただ1つだけ、腕時計が置かれていた。

「高級腕時計」の画像検索結果

 レイヴは刑事の胸ポケットに刺さったペンを素早く抜き取ると、腕時計をひっくり返す。

 高級な時計なのはすぐに理解できた。某有名メーカーの時計だ。その裏側に何かを見つけたレイヴはアジア人特有の細長い眼を見開き、急に駆け出した。

 廊下を素早く抜け階段を駆け下り、リビングに集められた客たちの中に雪崩のように押しかけ、接待客をかきわけて誰かを探しているようだ。

 この世界中から集まった人物たちの中で、アジア人の身長は特に低く、また慌てて階段を降りた刑事たちは、レイヴを見失ってしまった。

 しかしすぐに彼の姿は発見できた。客の中から声が上がったからだ。

「な、何をする」

 声の方を一斉に客も刑事たちも視線を弓矢のように素早く向けると、小柄な白人の腕を掴んで、その腕から腕時計を奪おうとしている。

 白人は拳でアジア人を殴りつけようとするが、逆にその腕を掴むと、白人の身体を空中で一回転させ、絨毯の上に横倒しにしてしまった。

 刑事がその一瞬の光景に呆然としていると、刑事の胸元に弧を描き腕時計が飛んできた。

 慌て、刑事が腕時計を受け取る。

「刑事さん、時計の裏を」

 高級腕時計の裏にはメーカーのロゴや型番が描かれているのと同時に、自分で傷つけたのだろう、ジェームズと書かれていた。

「2階の書斎にあった腕時計にも同じように書かれていましたよ。マイクと」

 倒れた男の名はマイケル・フライグという同じ証券会社の同僚だった。

 掴んだ腕をレイヴが離すと、制服警官たちがマイケルの身体を起こし、両腕を掴んだ。

「僕が何をしたって言うんです。彼と付き合って居たからって、罪なんですか。この国は同性愛者を差別するのか」

 大声を張り上げるマイケル。

 そこへ制服警官の一人が刑事に近づき、なにかを耳打ちした。

「マイケル・フライグ。君は大学で医学を志していたそうだね。つまり人体に詳しいわけだ。肋骨のどこを突き刺せば心臓に包丁が刺さるか、知識があるようだ」

 これにマイケルは顔を真っ赤にして叫んだ。

「ジェームズがいけないんだ。僕と別れて、メリッサを選ぶって言ってきて。僕は純粋にジェームズを愛していただけだ。だから殺したんだ、美しい思い出が消えないうちに」

 困った顔で刑事が制服警官に手を振って連れて行くように指示すると、犯人のマイケル・フライグは連行されていった。

 刑事は頭をかきながら招待客の中を織田レイヴの前までゆっくり歩いてきた。

「ジェームズは同性愛者じゃなかったようだ」

 レイヴは首を横に振った。

「彼はバイセクシャルだったんですよ」

 刑事はなるほど、と頷きながら、

「危うく誤認逮捕するところだった。助かったよ」

 と例を言った。

 アジア人はそう言われても、無表情だった。

「ところで1つ質問なんだが」

 刑事がアジア人を見下ろし、分厚い鼻頭をかき、

「お前さんは何者なんだい」

 事件を即座に解決した推測、洞察力で何者なのかを知りたくなった刑事の問に、アジア人の彼は無表情に答えた。

「ジェームズの友達。仕事はただの探偵です」



 
『殺人パーティ』 完

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プロフィール

HN:
富士島
年齢:
39
性別:
男性
誕生日:
1986/01/06
職業:
介護職
趣味:
小説、漫画、映画、PC、スマホ

P R