<?xml version="1.0" encoding="UTF-8" ?>
<rss version="2.0" xmlns:blogChannel="http://backend.userland.com/blogChannelModule" >
  <channel>
  <title>ミステリー小説、書く！！！</title>
  <link>http://powaro.kakuren-bo.com/</link>
  <atom10:link xmlns:atom10="http://www.w3.org/2005/Atom" rel="self" type="application/rss+xml" href="http://powaro.kakuren-bo.com/RSS/" />
  <description>ミステリー小説です。
毎週１回のペースで更新しますので、良かったら読んで感想をください。</description>
  <lastBuildDate>Mon, 25 Jul 2022 13:48:40 GMT</lastBuildDate>
  <language>ja</language>
  <copyright>© Ninja Tools Inc.</copyright>
  <atom10:link xmlns:atom10="http://www.w3.org/2005/Atom" rel="hub" href="http://pubsubhubbub.appspot.com/" />

    <item>
    <title>シャーロック・ホームズ</title>
    <description>
    <![CDATA[前回のブログ　<a href="https://powaro.kakuren-bo.com/Entry/23/" target="_blank" class="entry-list-titletext arrow-left" style="box-sizing: border-box; color: #0066cc; text-decoration-line: none; cursor: pointer;">【殺人パーティ】</a><br />
<br />
ミステリー、探偵と言えば<br />

<h2>「シャーロック・ホームズ」</h2>
<a target="_blank" href="//powaro.kakuren-bo.com/File/260px-Sherlock_Holmes_Portrait_Paget.jpg" title=""><img src="//powaro.kakuren-bo.com/Img/1658835272/" alt="" /></a> <br />
その昔、図書館に行けば必ず「シャーロック・ホームズの冒険」が置いてあったものである。<br />
<br />
シャーロックは今もなお、人気の書物なれど、出版当初からその人気は絶大なものであった。<br />
<br />
シャーロック・ホームズが出版された数年後には、当時、まだ珍しかった活動写真、つまり映画になり、これまでに幾人ものホームズを映画、テレビで演じた俳優の多いことか。<br />
<br />
そこまでしてホームズとは愛されるべきキャラクターなのだろうか？<br />
<br />
管理人はこのホームズという人間を、正直、いいやつとは思わないし、読んでいる人々も、けして満場一致で善人とは言わないだろう。<br />
<br />
まだ法律で薬物が規制される前の作品なので、ホームズは退屈になると、薬物に走る傾向にある。<br />
<br />
これはワトソンが何度も見ているので、確かなことなのだが、物語の主人公が薬物中毒というのは、面白い人間性ではないだろうか。<br />
<br />
実は、原作者のコナン・ドイルはホームズを好きになれなかったのだ。<br />
<br />
そのため、作品を早く終わらせたかった。<br />
<br />
しかし新聞に連載されたシャーロック・ホームズは、あまりの人気で、作者単独の判断では終わらせられなくなった。<br />
<br />
そこで何とかホームズを嫌われようとして、こうした設定をつけたのではないだろうか。<br />
<br />
その後、ホームズはモリアーティ教授と滝つぼに落ちて、ようやくドイルは呪縛から解放されたと思ったのだが、読者からどうして殺したんだ、という書簡が殺到したらしく、しかたなくまた連載を再開したという経緯がある。<br />
<br />
そのせいなのか、ホームズには呪いがある、という噂まであるほど、ドイルはホームズを嫌っていたという。<br />
<br />
最近では舞台を現代のイギリスにした「シャーロック」が大ヒットし、次のシーズンが望まれているほどの人気だ。<br />
<br />
これほど愛され、人気のある探偵もいないのだろう。<br />
<br />
<a target="_blank" href="//powaro.kakuren-bo.com/File/4e0025c6.jpeg" title=""><img src="//powaro.kakuren-bo.com/Img/1658835299/" alt="" /></a> <a target="_blank" href="//powaro.kakuren-bo.com/File/91gBnHX5K2L._AC_SL1500_.jpg" title=""><img src="//powaro.kakuren-bo.com/Img/1658835300/" alt="" /></a> <a target="_blank" href="//powaro.kakuren-bo.com/File/roku1.jpg" title=""><img src="//powaro.kakuren-bo.com/Img/1658835301/" alt="" /></a> <br />
<br />
]]>
    </description>
    <category>ミステリー小説考察</category>
    <link>http://powaro.kakuren-bo.com/%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B0%8F%E8%AA%AC%E8%80%83%E5%AF%9F/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA</link>
    <pubDate>Mon, 25 Jul 2022 13:48:40 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">powaro.kakuren-bo.com://entry/24</guid>
  </item>
    <item>
    <title>【殺人パーティ】</title>
    <description>
    <![CDATA[<h4><img src="https://kenishridgewood.files.wordpress.com/2012/04/dsc07762.jpg" alt="関連画像" /><br />
<br />
『殺人パーティ』　<br />
<br />
　事件が発生したのは、ニューヨークセントラルパーク沿いにあるアッパーイースト地区の一室で起こった。 　<br />
<br />
　このアッパーイースト地区は、ニューヨークの世間一般の金持ちが住む地区であり、憧れの場所となっていた。その一角にある家の一室、ホームパーティ中に、主催者のジェームズ・バニングスが殺されたのだ。 　<br />
<br />
　すぐにニューヨーク市警の警察官が駆け付け、家は封鎖され、パーティの出席者全員に事情聴取が行われた。 　<br />
<br />
　被害者ジェームズ・バニングスは証券会社に勤め、社交的でこうして知人を集めたパーティを主催するのが趣味のような、人のいい人物であった。<br />
<br />
　彼の遺体はキッチンで発見され、背中からキッチンにあった肉をさばく長い包丁で刺されており、心臓まで一直線に背中を貫いていた。<br />
<br />
　キッチンに当時、招待客は出入りしておらず、カクテルを作りにジェームズが一人、キッチンに居た。<br />
<br />
　招待客の人数は２０名。室内に荒らされた形跡はなく、金品の紛失もなかったこと。招待客が不審な人物を誰一人見ていないことから、２０名の客の中に犯人がいると殺人課の刑事たちは考えた。<br />
<br />
　そんな中、招待客たちは声をそろえて、犯人はメリッサ・キャンベルだと主張した。<br />
<br />
　メリッサはジェームズの同僚である。しかし社内では有名なほど二人は不仲であった。不仲のきっかけは、彼女が彼の顧客を奪ったというのだ。証券会社としては、利益をあげることが最大のノルマとされているが、メリッサはあくまで噂だが顧客と肉体関係を築くことで、彼から顧客を奪ったというのだ。<br />
<br />
　この一件から二人は度重なる口論をしている。これは同僚たちが何度も目撃していた。<br />
<br />
　犯行時刻、キッチンの方向から「メリッサ、やめて！」という声が聞こえていた。その後、駆け付けたジェームズの同僚が遺体を発見していた。<br />
<br />
　この声が誰だったのかはわからないが、メリッサが有力な容疑者となった。<br />
<br />
　刑事たちはパーティに出席してたメリッサに事情を聴くと、犯行時刻、彼女はトイレに居たというが、誰も目撃者はなく、遺体発見後の混乱から、彼女がトイレから出てきたのを目撃した人物をいなかった。<br />
<br />
　アリバイがないことから、彼女を連行する刑事たち。<br />
<br />
　しかしそれを止めたのは、小柄な猫背のアジア人の青年であった。<br />
<br />
「彼女は犯人ではありません」<br />
<br />
　小声の流暢な英語で刑事を止める青年は、織田レイヴと名乗り、顔からしてハーフと思われた。<br />
<br />
　アジア人の小柄な男が生意気な、と黒人の大柄な刑事が彼をどかそうとするも、彼はのらりくらりと太いその腕をかわす。<br />
<br />
「彼女を連行するのは冤罪を招きます、やめてください」<br />
<br />
　無表情な彼の言葉に、不気味なものを感じた刑事は、彼女が犯人ではない根拠を彼に尋ねた。<br />
<br />
　すると織田レイヴはトイレの方へのっそりと向かうと、小さいビニール袋を持ってトイレから出てきた。<br />
<br />
「彼女は生理中です。トイレに居たという証拠になるのではないですか？」<br />
<br />
　刑事が怪訝そうにしていると、メリッサは赤面して青年から袋を奪い取り、バックの中に押し込んだ。<br />
<br />
「誰か違う人物のものかもしれないではないか」<br />
<br />
　そういう刑事の言葉に青年は言い返す。<br />
<br />
「その織物はまだ暖かい。つまりさっき彼女が言った通り、トイレに居たということになります。織物は一つしかなかったので、他の方のものではないと思われます。調べていただければわかると思いますが」<br />
<br />
　警察官たちがすぐに他の女性たちに聞くと、確かに生理中の人物はいなかった。<br />
<br />
　だがそれでアリバイが成立したとは考えられなかった。もちろん青年もこれでアリバイが成立したとは考えていなかったのか、細い指を一つ立てて、刑事にいう。<br />
<br />
「事件現場に基本はあります。現場に一度戻りましょう」<br />
<br />
　というと青年は制服警官の静止をのらりくらりと避けて、キッチンへと到達した。<br />
<br />
　ジェームズの遺体はまたそこに横たわっていた。まだ鑑識が遺体や事件現場を捜査していた。<br />
<br />
　英語でまくしたてる捜査官を横目に、現場に抜き足で入る青年は、眼を見開いてうつ伏せに倒れているジェームズを見下ろした。背中には肉用の長い包丁の柄が立っていた。<br />
<br />
「犯人は人体に詳しいようです」<br />
<br />
　遺体を見るなり青年は言った。<br />
<br />
　刑事が根拠は、と言いたげに青年を見ると、青年はすぐに答えた。<br />
<br />
「通常、人は人を包丁で指すとき、刃を縦に持ち、突き刺します。もちろん腹部や背中の柔らかいところならば、刃は通るでしょう。しかし今回は心臓めがけ一突き。つまり肋骨の間を抜けて刃を横にして突いています。骨を断つのが難しいと理解している人物が犯行を行ったということです」<br />
<br />
　口ばやに言う青年。<br />
<br />
　刑事が視線で鑑識に説明を求めると、鑑識捜査官は、青年の説明が正しいと頷いた。<br />
<br />
「ならば犯人は限られてきます。人体、あるいは動物の肉体構造を勉強したことがのでしょう。経歴を調べればすぐに分かります」<br />
<br />
　刑事は急ぎ、制服警官に全員の経歴を調べるように命令した。<br />
<br />
　レイヴは遺体をじっと観たあと、急にキッチンを出てリビングに移動した。<br />
<br />
　そこには待機を命じられた招待客たちが待機していた。<br />
<br />
「刑事さん、僕もこの場所で声を聞きました。メリッサ、と確かに声は言っていました。ですがさっきも説明したように、メリッサは犯人ではありません。これは故意にに誰かが犯人をメリッサにしたてようとした、基本的心理作用を利用したものです。メリッサが犯人だと大声で叫ぶことで、自分から注意をそらすためのトラップですよ」<br />
<br />
　まくしたてるように言うと、今度、アジア人の男は２階へと駆け上がっていく。<br />
<br />
　刑事たちも慌て、現場を荒らされるのではないか、と絨毯がしいてある階段を駆け上がった。<br />
<br />
　彼は被害者ジェームズの寝室に居た。<br />
<br />
　特に物に触ることもなく、じっと部屋を見回していた。<br />
<br />
　几帳面な性格なのだろう、ジェームズの部屋は綺麗に整理されていた。<br />
<br />
「刑事さん、クローゼットを」<br />
<br />
　階段を駆け上がったことで肩で息をする刑事に、クローゼットを開けろ指示する。<br />
<br />
　刑事はムッとしながら若い制服警官にクローゼットを開けるよう、太い指で指示をした。<br />
<br />
　クローゼットにはスーツ、普段の衣服、家で着る衣服がキチンと整理されており、足元には靴も綺麗に整頓されて磨かれ並べられていた。<br />
<br />
　すぐにレイヴは刑事の顔を見た。<br />
<br />
「刑事さん、ジェームズは同性愛者ですよ」<br />
<br />
　訝しげにレイヴの顔を見る刑事は、<br />
<br />
「何を根拠にいうのかね」<br />
<br />
　と捜査を混乱させる彼の言葉に不機嫌な対応をした。<br />
<br />
「靴を見てください。綺麗に揃った靴に違和感を感じませんか？<br />
<br />
　刑事がいくつも並ぶ革靴を見ると、先がバラバラに並んでいる。<br />
<br />
「サイズが違う靴がいくつも」<br />
<br />
　ハッとした刑事が並んだ衣服を何着か見ると、サイズが違う服がいくつも並んでいる。<br />
<br />
「この家にはもう一人、男が暮らしていた」<br />
<br />
　人差し指で刑事を指し、レイヴは頷いた。<br />
<br />
　次にレイヴは寝室を出て向かい側の書斎に入る。<br />
<br />
　無数の金融関係の本が並ぶ部屋の真ん中には高級家具と思われる木製のデスクが置かれていた。<br />
<br />
　デスクの上も綺麗に整頓されていたが、ただ１つだけ、腕時計が置かれていた。<br />
<br />
<img src="https://i.gzn.jp/img/2018/08/31/why-rolex-watches-so-expensive/00.jpg" alt="「高級腕時計」の画像検索結果" /><br />
<br />
　レイヴは刑事の胸ポケットに刺さったペンを素早く抜き取ると、腕時計をひっくり返す。<br />
<br />
　高級な時計なのはすぐに理解できた。某有名メーカーの時計だ。その裏側に何かを見つけたレイヴはアジア人特有の細長い眼を見開き、急に駆け出した。<br />
<br />
　廊下を素早く抜け階段を駆け下り、リビングに集められた客たちの中に雪崩のように押しかけ、接待客をかきわけて誰かを探しているようだ。<br />
<br />
　この世界中から集まった人物たちの中で、アジア人の身長は特に低く、また慌てて階段を降りた刑事たちは、レイヴを見失ってしまった。<br />
<br />
　しかしすぐに彼の姿は発見できた。客の中から声が上がったからだ。<br />
<br />
「な、何をする」<br />
<br />
　声の方を一斉に客も刑事たちも視線を弓矢のように素早く向けると、小柄な白人の腕を掴んで、その腕から腕時計を奪おうとしている。<br />
<br />
　白人は拳でアジア人を殴りつけようとするが、逆にその腕を掴むと、白人の身体を空中で一回転させ、絨毯の上に横倒しにしてしまった。<br />
<br />
　刑事がその一瞬の光景に呆然としていると、刑事の胸元に弧を描き腕時計が飛んできた。<br />
<br />
　慌て、刑事が腕時計を受け取る。<br />
<br />
「刑事さん、時計の裏を」<br />
<br />
　高級腕時計の裏にはメーカーのロゴや型番が描かれているのと同時に、自分で傷つけたのだろう、ジェームズと書かれていた。<br />
<br />
「２階の書斎にあった腕時計にも同じように書かれていましたよ。マイクと」<br />
<br />
　倒れた男の名はマイケル・フライグという同じ証券会社の同僚だった。<br />
<br />
　掴んだ腕をレイヴが離すと、制服警官たちがマイケルの身体を起こし、両腕を掴んだ。<br />
<br />
「僕が何をしたって言うんです。彼と付き合って居たからって、罪なんですか。この国は同性愛者を差別するのか」<br />
<br />
　大声を張り上げるマイケル。<br />
<br />
　そこへ制服警官の一人が刑事に近づき、なにかを耳打ちした。<br />
<br />
「マイケル・フライグ。君は大学で医学を志していたそうだね。つまり人体に詳しいわけだ。肋骨のどこを突き刺せば心臓に包丁が刺さるか、知識があるようだ」<br />
<br />
　これにマイケルは顔を真っ赤にして叫んだ。<br />
<br />
「ジェームズがいけないんだ。僕と別れて、メリッサを選ぶって言ってきて。僕は純粋にジェームズを愛していただけだ。だから殺したんだ、美しい思い出が消えないうちに」<br />
<br />
　困った顔で刑事が制服警官に手を振って連れて行くように指示すると、犯人のマイケル・フライグは連行されていった。<br />
<br />
　刑事は頭をかきながら招待客の中を織田レイヴの前までゆっくり歩いてきた。<br />
<br />
「ジェームズは同性愛者じゃなかったようだ」<br />
<br />
　レイヴは首を横に振った。<br />
<br />
「彼はバイセクシャルだったんですよ」<br />
<br />
　刑事はなるほど、と頷きながら、<br />
<br />
「危うく誤認逮捕するところだった。助かったよ」<br />
<br />
　と例を言った。<br />
<br />
　アジア人はそう言われても、無表情だった。<br />
<br />
「ところで１つ質問なんだが」<br />
<br />
　刑事がアジア人を見下ろし、分厚い鼻頭をかき、<br />
<br />
「お前さんは何者なんだい」<br />
<br />
　事件を即座に解決した推測、洞察力で何者なのかを知りたくなった刑事の問に、アジア人の彼は無表情に答えた。<br />
<br />
「ジェームズの友達。仕事はただの探偵です」<br />
<br />
<br />
<br />
　<br />
『殺人パーティ』　完</h4>]]>
    </description>
    <category>ミステリー小説</category>
    <link>http://powaro.kakuren-bo.com/%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B0%8F%E8%AA%AC/%E3%80%90%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%81%AE%E5%87%BA%E5%B8%AD%E8%80%85%E3%80%91</link>
    <pubDate>Thu, 26 Apr 2018 12:10:54 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">powaro.kakuren-bo.com://entry/23</guid>
  </item>
    <item>
    <title>「不和の美ー22」END</title>
    <description>
    <![CDATA[22<br />
<br />
　出汁のいい香りが店内を包んでいた。筒井美咲の居酒屋では、ちょうど営業の準備を始めていた。<br />
<br />
　旬のカブをつかったカブラ蒸しを美咲は仕込んでいたのである。<br />
<br />
　カウンターに座り、美咲がいれたほうじ茶を飲みつつ、三田警部は腕時計の針を気にしていた。<br />
<br />
「古川さん、もういい加減帰ります。私も暇ではないのでね」<br />
<br />
　隣の席の背もたれにかけたコートを手に取ろうとする三田恭一警部。<br />
<br />
「今、カブラ蒸しが仕上がるので、よろしかったら味みなさいません？」<br />
<br />
　のれんの奥から和服に割烹着姿の筒井美咲か、香る笑顔を警部へ向けた。<br />
<br />
　この良く言えば愛想の良い、嫌味を言葉に混ぜると男を惹きつける彼女の笑顔は、例外なく三田警部の帰ろうとする脚を、その場に止めさせた。<br />
<br />
「事件で忙しいのに、申し訳ない」<br />
<br />
　お茶を飲みつつ、額の汗を拭いながら、古川栄太郎弁護士は、小さくなっていた。<br />
<br />
「呼びつけておいて、失礼なやつじゃないか」<br />
<br />
　警部は美咲の笑顔に胸を焦がしたかと思いきや、やはり呼び出した若者が姿を現さないことへ苛立ちを禁じ得ない様子だった。<br />
<br />
　警部の不満は沈静化しない。<br />
<br />
「事件現場へ土足であがる。事件を勝手に嗅ぎ回り関係者から通報される。迷惑ですよ」<br />
<br />
　警察官として腕組みしながら、弁護士へ苦情を申し立てた。<br />
<br />
「申し訳ありません。ですが警部。彼は事件に対する妙な嗅覚をもっていましてね。最初は私も不愉快に思いました。図々しいですからね。ですが事件に関して間違いなく、彼は何かを掴んだのだと思いますよ」<br />
<br />
　これまでの経験から、若い探偵がなにかを把握し、それが事件解決への大きな布石になることを、半ば確信めいて弁護士は断言した。<br />
<br />
　するとそこへ店の扉を開けて、ほぼ探偵本人が、見るからに重い足取りで入店してきた。<br />
<br />
　深刻な表情は、探偵が大きなものを含んでいるのが理解できた。<br />
<br />
「いらっしゃいませ。また寒くなってきましたね」<br />
<br />
　相変わらずの様子で美咲は、彼の好みのコーヒーをそっとカウンターに置く。<br />
<br />
　どっかと疲れた様子で腰を下ろした真田春也。<br />
<br />
　温かいコーヒーを喉に少し流して、枯れ葉が詰まったような首元を潤した。<br />
<br />
「落ち着いているようたが、警察官を呼び出すとは、何を考えているんだね、君は」<br />
<br />
　待たせた人物のことなどまったく眼中にような若者の様子に、憤慨して三田警部は、軽く怒鳴るように言い放った。<br />
<br />
　店の空気がピンと張り詰めたのに、かまうことなく探偵はまたコーヒーを一口のみ、それからようやく警部の顔を見据えた。<br />
<br />
「今から話すことは、あくまで俺の主観で捜査を混乱させる意味でお話するわけではありませんから、それだけは理解してください」　<br />
<br />
　そういうと古川弁護士、筒井美咲を一瞥した。<br />
<br />
「まず事件が起きた時間帯に、関係者でアリバイがない人間はいませんでした。犯行は関係者ではなく物取りの犯行と警察はみたてていたでしょう。そうですね、警部」<br />
<br />
　警部は若者に促されたのを不服に思ったような顔をして、嫌味にうなずいた。<br />
「アリバイがあり裏付けもとれている。現場の状況から判断して物取りの犯行であることはまず、間違いない」<br />
<br />
　警部は断言した。<br />
<br />
　春也は頷いて頸部をみやった。<br />
<br />
「その根拠は？」<br />
<br />
　急に鋭くなった青年の顔に、一瞬戸惑いの顔をするも、警部は即答する。<br />
<br />
「犯行時刻、付近で不審な男の目撃情報も上がってきている」<br />
<br />
「タクシーの乗務員の証言ですね。俺も聞きましたよ。ただ今回の事件の真相へ迫るとき、警察も俺自身にも、思い込み、があったんじゃないかと思う」<br />
<br />
　警部を責めるわけでもなく、静かに探偵は言った。<br />
<br />
「殺害された荒木氏が資産家だったことから、金にまつわる、あるいは恨みによる殺人だと誰もが思った。そして恨みのある人たちに話を聴いて、全員にアリバイがあった。犯人は目撃証言から男だと断定。そこから思い込みは始まっていたと気づいたんだよ」<br />
<br />
　すべてを思い込みだと探偵は断言する。<br />
<br />
　警部が自らの捜査に誇りを持っているのは当然であり、探偵の言葉に激高する素振りを見せた。<br />
<br />
　が、探偵は口を早く、自らの仮説を中断されるまいとする。<br />
<br />
「まず、犯行時間に目撃された男を、どうして男だと断定できる。顔は帽子をかぶっていて見えなかった。男の格好をしていたから、犯人は男だ。皆、そう思い込んだ。女性が男の格好をしていた可能性もある」<br />
<br />
　だんだんと春也の声は声量を上げた。<br />
<br />
　横に座る弁護士はこのとき、なにかに気づいた顔をしたが、春也は止まらない。<br />
<br />
「次にアリバイ。全員のアリバイ確定していて、裏付けもとってある。もちろん警察に落ちどはない。証言している本人も思い込みで証言していたんですから。<br />
俺はここに来る前に、町の酒屋によって来ました。荒木氏が殺害された時刻、酒屋の店主派この居酒屋に酒を届けたと証言しました。美咲さん、そうでしたね？」<br />
<br />
　探偵の若い目が料理の下ごしらえをする女将に向けられた。<br />
<br />
「君は美咲さんを！」<br />
<br />
　立ち上がった三田栄太郎は、自らが連れてきた探偵を、睨みつけた。<br />
<br />
　しかし動じることなく、筒井美咲を探偵はみやった。<br />
<br />
　菜箸を静かに置いた美咲は、ゆっくり甘い香りのする微笑を浮かべた。<br />
<br />
「私はあの時、居ませんでした」<br />
<br />
　驚いた警部は、<br />
<br />
「だが酒屋の店主はーー」<br />
<br />
　と、呆然とする。<br />
<br />
　探偵は自分が探偵した酒屋の店主の証言を口走った。<br />
<br />
「店主は頑なに美咲さんは居たと言っていた。だけど目撃した時の様子を聞いた時、あるルールがこの居酒屋と酒屋にあることがわかったんです。美咲さんがいるときは店の玄関を開けて、いないときには鍵をして、改めて配達をする。つまり美咲さんがいたか居ないか、店主はあの日、目撃したというわけではなかったんです。居酒屋の扉が空いている、つまり美咲さんがいる、そう思い込んだだけだったんです」<br />
<br />
　この新しい証言に、古川弁護士が血相を変える。<br />
<br />
「居なかったから犯人とは限らないではないか。第一、叔父である荒木氏を殺害する動機が美咲さんにはない」　<br />
<br />
　裁判の弁護人のように、春也の弁舌を否定した。<br />
<br />
　素早く弁護士の顔を指差し、弁護士がいう主張を否定した。<br />
<br />
「主観は捨てるべきですね、三田さん。恨みによる犯行と誰もが思います。俺もそう思ってました。だけど犯行現場の織部焼をずっと見てて気になってたことがわかったんですよ」　<br />
<br />
　そういうとスマホを取り出して画像を提示した。そこには抹茶のような色合いの陶器が映し出されていたが、下部がひび割れていた。<br />
<img src="http://livedoor.blogimg.jp/aoi515horikawa/imgs/5/f/5f4cc11e.jpg" alt="&atilde;&ccedil;&sup1;&eacute;&uml;&ccedil;&frac14; &atilde;&sup2;&atilde;&sup3;&atilde;&atilde;&reg;&ccedil;&raquo;&aring;&aelig;&curren;&ccedil;&acute;&cent;&ccedil;&micro;&aelig;" /><br />
「美咲さんはこれをどう思います」<br />
<br />
　と訪ねられ、筒井美咲は不思議そうな顔をした。<br />
<br />
「直感的で構いません」<br />
<br />
　促されて美咲はうなずく。<br />
<br />
「素敵だと思いますけど」<br />
<br />
　それを聞いてすぐに同じ画像を警部、弁護士に探偵は見せた。<br />
<br />
　2人は不思議そうに探偵を見る。<br />
<br />
「織部焼の始祖、古田織部にはこういう逸話があります。<br />
師匠、千利休が捨てようとした茶道具を受け取ったと。それはお茶をすくう木の道具なのですが、そこにフシがついていて、完璧を求める利休は嫌いました。しかし織部はそれを美しいと呼び、後に『破調の美』というのを確立した。破調、つまり美には一定の美しさがある。シンメトリー、調和のとれた美しさ。万人が美しいものに古田織部は真っ向から立ち向かった。千利休亡き後、新しきことをせよ、という千利休の教えを受け、織部は常に新しい美を追い求めた。その道は時の将軍徳川秀忠をも魅了し、弟子としている。武将として、時の流れを読む才覚のあった織部は、茶人としても優れた嗅覚を持ち、自らの好み〈織部好み〉は日本中でブームを巻き起こした。破調にこそ新しく真の美しさを古田織部は感じたのです。<br />
美咲さん。貴女もそうなのではありませんか？」<br />
<br />
　歴史の講釈を聞かされた弁護士と警部は、美咲をみひった。<br />
<br />
　彼女は静かに白い喉を上下に動かすと、また甘い微笑を浮かべた。<br />
<br />
「叔父は誠さんとのことを許してくれたんです。彼ならきっと私を幸せにしてくれるって言ったんですよ」<br />
<br />
　２人の関係を荒木氏が認めた事実に、古川弁護士にとって意外だった。荒木氏は自分の意見をけして変える人間ではなく、まさしく頑固一徹をそのまま人間に置き換えたような人であった。だから近所の人と付き合いがなく、息子とも関係性がうまくいっていなかった。<br />
<br />
　その荒木氏が態度を軟化させるというのは、古い付き合いの弁護士には、考えられないことだったのだ。<br />
<br />
「なぜ、それなら荒木氏を。いや、まだ断定したわけでは」<br />
<br />
　弁護士が美咲にいうも、自分が美咲を犯人だとした言葉に、うしろめたさを感じた。<br />
<br />
「いいんですよ、古川さん。叔父を殺したのは私です。私がこの手で」<br />
<br />
「まってください、動機はなんなんです。佐藤誠との関係が認められたのなら、被害者を殺害する意味は？」<br />
<br />
　三田警部が警察官として、三田恭一個人として、動機がはっきりしない事態に、当惑をかくせずに、美咲を問いただした。<br />
<br />
　彼女は考えた。自分でもあの時のことを追憶したのである。<br />
<br />
「なんでしょうか？　私は叔父がすべてを否定して、不完全な関係性が続くのを、きっと美しく思っていたのでしょうね。古田織部のように、破調に美しさを感じたのかもしれません」<br />
<br />
　そういうと下ごしらえ中の鍋のガスを消して、カウンターから出てくると、警部の近くに近づいて行った。<br />
<br />
「連れて行ってくださいますか？」<br />
<br />
　最後の彼女のその笑みは、これまでになく美しく、静かな丘に咲く野花のようなすがすがしさもあった。<br />
<br />
<br />
エピローグ<br />
<br />
　パトカーが遠ざかっていくのを居酒屋の前で見送る若い探偵と弁護士は、騒ぎを聞きつけて動揺の顔色がそれぞれに浮かぶ群衆の中で、事件の終わりを見つめていた。<br />
<br />
　赤い光が遠ざかっていくと、自然とその場から波が引くかのように人が家路に帰っていく。<br />
　<br />
　制服警官が居酒屋の前で現場検証の準備をしている。<br />
<br />
　まだ呆然と現実を受け入れられずにいる古川栄太郎は、いまにも倒れてしまいそうな蒼白な顔色で夜風に吹かれていた。<br />
<br />
「君は、君はどこで美咲さんが犯人だと」<br />
<br />
　ポケットに手を入れ、肌寒くなってきた春先の夜の空に、白い息をあげた。<br />
<br />
「だから言ったでしょう。今回の事件は思い込みだったと。荒木氏の書斎には誰も入らなかった。筒井美咲さんも書斎には入ったことがないと言っていました。ですが、あの書斎の電気のスイッチは部屋の入口にはなかった。誰もが部屋の電気のスイッチは壁際にあると思いますよ。しかし書斎は荒木氏が改装して、デスクの横に電気のスイッチがあったんです。彼女は俺が部屋に入った時、迷うことなく電気のスイッチを入れて、それでもなお、書斎には入ったことがなかったと断言しました。だから彼女を犯人だと考えたんですよ」<br />
<br />
　そういうと事件の終わりをゆっくりとかみしめるように、さらにつぶやいた。<br />
<br />
「人の美意識とはわかりません。何が幸せか、幸せでないかなど、他人の価値観で決めつけるものではないんです。美咲さんの幸せは輪郭の歪んだ不完全さにあったのかも」<br />
<br />
<br />
「不和の美」　完<br />
<br />
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー<br />

<h3>筆者あとがき</h3>
あとがきとはおこがましいのだが、初めての探偵小説を書いた感想を少し述べたいと思います。<br />
<br />
筆者は正直、ミステリー小説をあまり読みません。主にSFや時代物の伝奇、ファンタジーが多く、ミステリーも本棚にいくつか並んでいますが、多くはありません。<br />
<br />
それでも探偵という存在には昔から憧れがあり、こうして初めてのミステリー、初めての探偵小説を書くこととしたのです。<br />
<br />
しかし小説にミステリー要素、謎要素を入れるのは好きではありますが、それを主人公が論理的に解決するというのを書くのが非常に難しかった。<br />
<br />
特に有名な作家の皆様のミステリー小説の出来栄えは恐ろしいほど高く、短編であっても読者をひきつけ、それでいて伏線をはり、犯人を推理させる仕掛けは素晴らしい。さらに大がかりなトリックを考える作家さんはさらにそれを考える頭脳が必要です。<br />
<br />
それでも筆者の中には、ある種、探偵を書きたいという欲求があり、こうして書くことに至ったわけです。<br />
<br />
真田春也という人物は、どこか失礼なところがありますし、事件のことしか頭にありません。だから事件を客観的にみることができるのです。<br />
<br />
作者としてはもっと真田春也を失礼な人間にしたかったのですが、小心者の作者にはあまりずけずけとしたキャラクターは書けないのかもしれませんね。<br />
<br />
歴史が個人的に好きなので、歴史を交えた物語にするつもりではありましたが、今読んでみるとあまり歴史が関与していない気もします。<br />
<br />
いずれにしてもこのブログ上にはこれからも複数の作品をアップする予定でいますので、長い目で見ていただければ幸いです。<br />
<br />
ほとんど言い訳のようなあとがきでしたが、次回の作品を読んでいただけたら幸いです。<br />
<br />
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー<br />
ー宣伝広告ー<br />
<br />
本ということで前に読んでいた漫画が映画になったので、おすすめします。<br />
アニメ版も面白かったですよ。<br />
<br />
<br />

<table border="0" cellpadding="0" cellspacing="0">
<tbody>
<tr>
<td>
<div style="border: 1px solid #000000; background-color: #ffffff; width: 138px; margin: 0px; padding-top: 6px; text-align: center; overflow: auto;"><a href="https://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/14b050fe.79c2cbc5.14b050ff.f072f8ed/?pc=https%3A%2F%2Fitem.rakuten.co.jp%2Fmangazenkan%2Fsa-53%2F&amp;m=http%3A%2F%2Fm.rakuten.co.jp%2Fmangazenkan%2Fi%2F10009761%2F&amp;link_type=picttext&amp;ut=eyJwYWdlIjoiaXRlbSIsInR5cGUiOiJwaWN0dGV4dCIsInNpemUiOiIxMjh4MTI4IiwibmFtIjoxLCJuYW1wIjoiZG93biIsImNvbSI6MSwiY29tcCI6ImRvd24iLCJwcmljZSI6MSwiYm9yIjoxLCJjb2wiOjB9" target="_blank" rel="nofollow" style="word-wrap: break-word;"><img src="https://hbb.afl.rakuten.co.jp/hgb/14b050fe.79c2cbc5.14b050ff.f072f8ed/?me_id=1229256&amp;item_id=10009761&amp;m=https%3A%2F%2Fthumbnail.image.rakuten.co.jp%2F%400_mall%2Fmangazenkan%2Fcabinet%2Fsyncip_0013%2Fsa-53_01.jpg%3F_ex%3D80x80&amp;pc=https%3A%2F%2Fthumbnail.image.rakuten.co.jp%2F%400_mall%2Fmangazenkan%2Fcabinet%2Fsyncip_0013%2Fsa-53_01.jpg%3F_ex%3D128x128&amp;s=128x128&amp;t=picttext" border="0" style="margin: 2px;" alt="[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]" title="[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]" /></a>
<p style="font-size: 12px; line-height: 1.4em; text-align: left; margin: 0px; padding: 2px 6px; word-wrap: break-word;"><a href="https://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/14b050fe.79c2cbc5.14b050ff.f072f8ed/?pc=https%3A%2F%2Fitem.rakuten.co.jp%2Fmangazenkan%2Fsa-53%2F&amp;m=http%3A%2F%2Fm.rakuten.co.jp%2Fmangazenkan%2Fi%2F10009761%2F&amp;link_type=picttext&amp;ut=eyJwYWdlIjoiaXRlbSIsInR5cGUiOiJwaWN0dGV4dCIsInNpemUiOiIxMjh4MTI4IiwibmFtIjoxLCJuYW1wIjoiZG93biIsImNvbSI6MSwiY29tcCI6ImRvd24iLCJwcmljZSI6MSwiYm9yIjoxLCJjb2wiOjB9" target="_blank" rel="nofollow" style="word-wrap: break-word;">【在庫あり/即出荷可】【新品】坂道のアポロン (1-9巻 全巻) 全巻セット</a><br />
<span>価格：3909円（税込、送料別)</span> <span style="color: #bbb;">(2018/3/15時点)</span></p>
</div>
<br />

<p style="font-size: 12px; line-height: 1.4em; margin: 5px; word-wrap: break-word;"></p>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<br />
]]>
    </description>
    <category>ミステリー小説</category>
    <link>http://powaro.kakuren-bo.com/%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B0%8F%E8%AA%AC/mystery_22</link>
    <pubDate>Thu, 08 Feb 2018 01:50:20 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">powaro.kakuren-bo.com://entry/22</guid>
  </item>
    <item>
    <title>「不和の美ー21」</title>
    <description>
    <![CDATA[21<br />
<br />
　真田春也は収穫に心躍らせる一方、もう1つ、確かめなければならないことがこの事件にある、と同じ隣町のアパートへ向かった。<br />
<br />
　事件が起こった田舎の町よりは少し栄えてはいるものの、駅は平屋のようなたたずまいで、そこからまっすぐに伸びる商店街も今はシャッターが閉まっている店の方が多かった。<br />
<br />
　飲み屋が建ち並ぶ細い路地を抜け、メインの通りと言えるその商店街へ出て、駅とは真逆に進み、商店街の外れの小道を入ったところに、小さいアパートがある。そこが彼の目的の場所であった。<br />
<br />
　階段を上り2階の端の部屋の前に彼は立った。今時みない木目の扉は、鍵を直接さしてドアノブをひねるタイプだ。<br />
<br />
　インターホンはついているらしく、押してみると、部屋の中でポンポーンとレトロな音が響いた。<br />
<br />
　すぐに人の気配が玄関へ向かってくるのが分かった。<br />
<br />
　扉が開き、男が顔を出す。筒井美咲の居酒屋で見た佐藤誠である。<br />
<br />
　最初、客人だと思い笑みで対応した佐藤誠であるが、真田春也の顔を見た瞬間、表情は凍り、すぐに薄い扉を閉めようと、ドアノブを内側へ引いた。<br />
<br />
　春也はそこへ体をねじ込む形で扉の開閉を邪魔した。<br />
<br />
　当然のことながら春也の体は扉に挟まり、胸と背中に鈍痛が走る。<br />
<br />
「うっ」<br />
<br />
　息が詰まった探偵の声に、思わずドアノブから手を離す誠は、胸を撫でる探偵の顔を心配そうにのぞき込んだ。<br />
<br />
　これに対する探偵の言葉は、もちろん事件に対する物でしかなかった。<br />
<br />
「筒井美咲さん、荒木義男氏について、聞きたいことがあります」<br />
<br />
　事件の為、自らの解決への欲求を満たす為、春也はその体を喜んで犠牲にする。<br />
<br />
　お世辞にも広く綺麗とは言えない男1人の暮らしは、質素で生活感が大きかった。<br />
<br />
　台所のゴミ袋に詰め込まれたカップ麵の器。洗濯機の前に山になった洗濯物。部屋の中心にあるコタツの上にはビールの空き缶が並び、食べかけのピーナッツや食べこぼしの後が見えた。<br />
<br />
　この男は仕事以外は飲食をするのみなのはすぐに観察すれば分かった。<br />
<br />
　部屋の中に入ると埃を軽く被った座布団を手で払い、誠は狭い部屋の床の上に座布団を差し出した。<br />
<br />
　春也はそれに座るなりお茶を入れようとする男を引き留めた。<br />
<br />
「聞きたいことを聞いたらすぐに帰りますから、お茶はけっこう。それよりも聞かせてください」<br />
<br />
　と前置きもなにもなく探偵は質問を直球で投げつけた。<br />
<br />
「町の噂は知っています。貴方が筒井美咲さんを慕っている。そして付き合う事を荒木氏に懇願したが断られた。この噂は事実ですか？」<br />
<br />
　居酒屋で伊美徹の建設会社の女性従業員が話していたのを探偵はしっかりと覚えていた。その他にも小さい田舎の町では、殺人事件などという大きな出来事が起これば、自然と噂は耳に入ってくるものだ。例えそれが探偵のように外部の人間の耳でもだ。<br />
<br />
　佐藤誠は少し間を置いた。自分の中でこれまでの行動をしっかり整理しようとしていたのだろう。春也が見ても何かを必死に考えているのは分かった。<br />
<br />
　そして結ばれた薄い唇を男は開いた。<br />
<br />
「ええ。事実です」<br />
<br />
　これに矢継ぎ早に探偵は質問をかぶせた。<br />
<br />
「犯行時間のアリバイを聞かせてください」<br />
<br />
　犯人である可能性がある以上、彼の興味はだんぜん大きくなる。<br />
<br />
　佐藤誠は少しまた考えてからだ口を開く。<br />
<br />
「出勤前の時間ですから朝食をとって、身支度をしていました。これは警察の人にも話しました。丁度あの日は隣人の奥さんが朝早くにアパートの会報を届けにきたので、顔は合わせていますからアリバイは間違いありません」<br />
<br />
　また1つ、収穫した春也は、少し興奮を溜息で抑えるように呼吸した。そして個人的な疑問を口にした。<br />
<br />
「荒木氏と美咲さんのことについてもめたという噂も事実だと？」<br />
<br />
　アリバイが立証されているのだから、探偵の仕事は終わりだ。だが探偵にとって恨みによる犯行を省くことはできなかった。動機がある人物は疑わずにはいられなかったのだ。<br />
<br />
「本当です。俺は美咲さんと付き合うことを荒木さんに認めてもらおうと、家に行ったんです。難しい人物なのは承知していました。ですが最初はあってさえもらえず。何度も訪ねたんです。そしてようやく会ってもらえたのですが、あっさりと玉砕でした。俺の本気の気持ちを伝えたんですけどね」<br />
<br />
　そういうと恥ずかしげに男は微笑んだ。50代も見えてきた男にしては、思春期のような笑みであった。<br />
<br />
　<br />
　そうした恋模様に一切の興味を持たない探偵の興味は、もっぱら事件の事柄だけだ。<br />
<br />
「愛する人との付き合いを反対され、殺意を抱いた？」<br />
<br />
　笑みがすぐに困った硬直した表情へと変化する佐藤誠。<br />
<br />
「ち、違います。逆です」<br />
<br />
「逆？」　<br />
<br />
「俺が美咲さんのことを好きなのは分かった。だが今のお前は養えるのか。男は女を守らないといかん。それがお前にできるのかって。正直、胸を張って守れますっては言えませんでした。だから自分の甘さを知ったというかなんというか。本当に情けない男ですよ」<br />
<br />
　佐藤誠はハニカンでいたのだが、探偵にはなるほど、納得した。<br />
<br />
　この男に人を殺すことはできない。今の話と表情で探偵は確信を得た。<br />
<br />
　だが最後の質問は避けることはできなかった。<br />
<br />
「佐藤さんは織部焼きというのをご存知ですか？」<br />
<br />
　不思議そうに顔を上げ、訝しく探偵へ逆に男は質問した。<br />
<br />
「なにかのお菓子ですか？」<br />
<br />
　まったく知らない様子なのはそこ言葉で理解できた。<br />
<br />
　その時、上着の内ポケットに入れていたスマホが唸るようにバイブレーションで電話だと探偵に伝えた。<br />
<br />
　素早くとって画面をみると、それが古川英太郎弁護士からだった。<br />
<br />
「古川さん、どうしました？」<br />
<br />
　脳天気な声で答えた春也とは裏腹に、弁護士の声は、緊迫していた。<br />
<br />
「君は何をしてるんだ！」<br />
<br />
　なんのことなのかわからず、キョトンとしていると、彼の行動が起こした余波を弁護士は伝えた。<br />
<br />
「怪しい男が事件について聞きまわってるって警察に通報があったそうだ。今、三田警部がやってきてすごい剣幕だ。すぐに帰ってきたまえ」<br />
<br />
　これに飄々も探偵は答えた。<br />
<br />
「分かりました。ただもう一ヶ所よるところがあるので、少し遅れます。それと、三田警部と一緒に美咲さんの店で待っていてください。それではあとで」<br />
<br />
　と、一方的にスマホを切ると、佐藤誠の部屋を出ようと彼は立ち上がった。<br />
<br />
「あ、あの。美咲さんになにかあったんですか？」<br />
<br />
　恋する女を心配そうにしている男。<br />
<br />
　それに向かい、無表情で探偵は言った。<br />
<br />
「真実が万人にとって幸福な結末をもたらすとは限らない。それだけは覚えておいてください」<br />
<br />
　そして探偵は最後の仕上げに向かうのだった。<br />
<br />
第22回へ続く<br />
<br />
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー<br />
<br />
ー宣伝広告ー<br />
<br />
その昔、江戸川乱歩原作の衝撃的映画が公開された。<br />
<iframe width="400" height="225" src="http://www.youtube.com/embed/-rbRWgr4F0Q" frameborder="0" allowfullscreen=""></iframe><br />
<br />
その原作は[パノラマ島奇談]とされているが、こちらが本当の原作。<br />

<table border="0" cellpadding="0" cellspacing="0">
<tbody>
<tr>
<td>
<div style="border: 1px solid #000000; background-color: #ffffff; width: 138px; margin: 0px; padding-top: 6px; text-align: center; overflow: auto;"><a href="https://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/14ac6038.d83725d5.14ac6039.769145be/?pc=https%3A%2F%2Fitem.rakuten.co.jp%2Fbook%2F269310%2F&amp;m=http%3A%2F%2Fm.rakuten.co.jp%2Fbook%2Fi%2F10187414%2F&amp;link_type=picttext&amp;ut=eyJwYWdlIjoiaXRlbSIsInR5cGUiOiJwaWN0dGV4dCIsInNpemUiOiIxMjh4MTI4IiwibmFtIjoxLCJuYW1wIjoiZG93biIsImNvbSI6MSwiY29tcCI6ImRvd24iLCJwcmljZSI6MSwiYm9yIjoxLCJjb2wiOjB9" target="_blank" rel="nofollow" style="word-wrap: break-word;"><img src="https://hbb.afl.rakuten.co.jp/hgb/14ac6038.d83725d5.14ac6039.769145be/?me_id=1213310&amp;item_id=10187414&amp;m=https%3A%2F%2Fthumbnail.image.rakuten.co.jp%2F%400_mall%2Fbook%2Fcabinet%2F1016%2F9784488401016.jpg%3F_ex%3D80x80&amp;pc=https%3A%2F%2Fthumbnail.image.rakuten.co.jp%2F%400_mall%2Fbook%2Fcabinet%2F1016%2F9784488401016.jpg%3F_ex%3D128x128&amp;s=128x128&amp;t=picttext" border="0" style="margin: 2px;" alt="[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]" title="[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]" /></a>
<p style="font-size: 12px; line-height: 1.4em; text-align: left; margin: 0px; padding: 2px 6px; word-wrap: break-word;"><a href="https://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/14ac6038.d83725d5.14ac6039.769145be/?pc=https%3A%2F%2Fitem.rakuten.co.jp%2Fbook%2F269310%2F&amp;m=http%3A%2F%2Fm.rakuten.co.jp%2Fbook%2Fi%2F10187414%2F&amp;link_type=picttext&amp;ut=eyJwYWdlIjoiaXRlbSIsInR5cGUiOiJwaWN0dGV4dCIsInNpemUiOiIxMjh4MTI4IiwibmFtIjoxLCJuYW1wIjoiZG93biIsImNvbSI6MSwiY29tcCI6ImRvd24iLCJwcmljZSI6MSwiYm9yIjoxLCJjb2wiOjB9" target="_blank" rel="nofollow" style="word-wrap: break-word;">孤島の鬼 （創元推理文庫） [ 江戸川乱歩 ]</a><br />
<span>価格：712円（税込、送料無料)</span> <span style="color: #bbb;">(2018/2/5時点)</span></p>
</div>
<br />

<p style="font-size: 12px; line-height: 1.4em; margin: 5px; word-wrap: break-word;"></p>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>]]>
    </description>
    <category>ミステリー小説</category>
    <link>http://powaro.kakuren-bo.com/%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B0%8F%E8%AA%AC/mystery_21</link>
    <pubDate>Sun, 04 Feb 2018 13:18:13 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">powaro.kakuren-bo.com://entry/21</guid>
  </item>
    <item>
    <title>「不和の美ー２０」</title>
    <description>
    <![CDATA[<a target="_blank" href="//powaro.kakuren-bo.com/File/ameman_inakanoyoake_TP_V.jpg" title=""><img src="//powaro.kakuren-bo.com/Img/1517830815/" alt="" /></a> <br />
２０<br />
<br />
　地方のスナックというのは、どこでも同じような雰囲気がある。紫色の派手なネオン看板。外壁のはげた小さな建物。木製の分厚い扉。<br />
<br />
　真田春也は金メッキのはげた太い取っ手を引っ張り、木製の扉の上部に設置された鈴を喫茶店の入店のように鳴らして、まだ春の冷たい風が室内に吹き込むのと同時に入店した。<br />
<br />
　足下には絨毯素材が敷き詰められ、カウンターが入り口すぐに椅子を並べ、奥に黒いソファが向かい合って並べてあった。ソファの間のテーブルには、未だ営業を待つ灰皿が積み上げられ、カラオケのタッチパネル、マイクがキッチリ揃えられていた。<br />
<br />
「ごめんなさい、営業はまだなのよ。夜に来てくれる？」<br />
<br />
　人の気配を察知したのだろう、カウンターの奥ののれんから、枯れ葉を擦り合わせるような、少し枯れた女性の声が響いてきた。<br />
<br />
「伊美さんについて少しお聞きしたいのですが」<br />
<br />
　探偵は奥まで入って行くと、図々しくカウンターの椅子にどっかと腰を下ろした。<br />
<br />
　怪訝そうな顔でのれんをくぐってきた、40代前半と思われる女性は、あつでのファンデーションで、不自然に顔が白く、薄暗い店内に能面の如く顔が浮き上がっていた。<br />
<br />
「三田って刑事さんに全部話したけど、まだ聞きたいことでも？」<br />
<br />
　と言った女性の顔が、警察官ではない探偵の姿に、怪訝の雲で曇った。<br />
<br />
「記者なら帰って。話すことはないよ」<br />
<br />
　不機嫌に言い捨てのれんの奥に引き返す女性。<br />
<br />
　その脚を止めたのは、彼のズケズケとした物言いであった。<br />
<br />
「伊美社長との肉体関係は、長いんですか？」<br />
<br />
　単刀直入に質問され、女性を思わずその垂れ始めた胸の奥がドキッとしたのか、白い顔を瞬間的に探偵へ向け直すと、般若の如く睨み付けた。<br />
<br />
「他人には関係ないでしょ。さっさと出て行きなさいよ」<br />
<br />
　憤慨した彼女は春也に怒鳴ると、今にも平手が飛んで来そうな勢いの目つきを、更に探偵へ投げやった。<br />
<br />
「伊美社長の無実は貴女の証言に託されています。その様子では伊美さんの間柄は深いように見えます。だったらこの質問に答えるべきだと思いますよ」<br />
<br />
　まるで他人事のように口ずさむ探偵には、おののきというものはまるで見えず、ただ事実を確認した、それだけの心理が働いていた。<br />
<br />
　その態度が逆に彼女の不信感を沸き起こしたらしく、カウンターから出てくるなり、彼の腕を凄まじい力で引っ張り、店から追い出そうとした。<br />
<br />
「荒木さんの殺人を知っていますね。犯行当日、伊美さんと貴女は一緒だったんですか？　それさえ聞ければ、帰りますよ」<br />
<br />
　この怪しい若者をとにかく追い払いたい彼女は、<br />
<br />
「ええ、社長はあの日、あたしの部屋にいたわ、あさまで。だからあの人が犯人なわけないのよ」<br />
<br />
「具体的になんじまでです？」<br />
<br />
「6時過ぎまでよ。もういいでしょ、出て行ってちょうだい」<br />
<br />
　追い出されて店から飛び出した彼は、しかしこの店までやってきた行動の意味があったと、収穫に満足した笑みを浮かべた<br />
<br />
　容疑者が消えたことは、彼にとって難解なパズルを解いている感覚らしく、それは嬉しそうな笑みであった。<br />
<br />
第２１回へ続く<br />
<br />
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー<br />
<br />
ー宣伝広告ー<br />
<br />
筆者は個人的に山田風太郎の「忍法帖シリーズ」のファンなのだが、最近、また新しい一冊を読んでいるので、ご紹介したいです。<br />
<br />
まだ室町幕府が健在だった頃、大名、松永弾正は根来忍者の精鋭をつれて公方さまの新年の祝いに訪れていた。そこで剣聖上泉伊勢守の弟子と根来忍者の精鋭を戦わせる余興をおこなったのだが、そこから凄惨なる戦いと松永弾正の陰謀が始まる･･････。<br />
<br />
<br />

<table border="0" cellpadding="0" cellspacing="0">
<tbody>
<tr>
<td>
<div style="border: 1px solid #000000; background-color: #ffffff; width: 138px; margin: 0px; padding-top: 6px; text-align: center; overflow: auto;"><a href="https://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/14af36e3.6d541b18.14af36e4.02f6f526/?pc=https%3A%2F%2Fitem.rakuten.co.jp%2Frakutenkobo-ebooks%2Ff9ee9c05f43c3b12a0879e6dca909487%2F&amp;m=http%3A%2F%2Fm.rakuten.co.jp%2Frakutenkobo-ebooks%2Fi%2F13390254%2F&amp;link_type=picttext&amp;ut=eyJwYWdlIjoiaXRlbSIsInR5cGUiOiJwaWN0dGV4dCIsInNpemUiOiIxMjh4MTI4IiwibmFtIjoxLCJuYW1wIjoiZG93biIsImNvbSI6MSwiY29tcCI6ImRvd24iLCJwcmljZSI6MSwiYm9yIjoxLCJjb2wiOjB9" target="_blank" rel="nofollow" style="word-wrap: break-word;"><img src="https://hbb.afl.rakuten.co.jp/hgb/14af36e3.6d541b18.14af36e4.02f6f526/?me_id=1278256&amp;item_id=13390254&amp;m=https%3A%2F%2Fthumbnail.image.rakuten.co.jp%2F%400_mall%2Frakutenkobo-ebooks%2Fcabinet%2F4800%2F2000002094800.jpg%3F_ex%3D80x80&amp;pc=https%3A%2F%2Fthumbnail.image.rakuten.co.jp%2F%400_mall%2Frakutenkobo-ebooks%2Fcabinet%2F4800%2F2000002094800.jpg%3F_ex%3D128x128&amp;s=128x128&amp;t=picttext" border="0" style="margin: 2px;" alt="[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]" title="[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]" /></a>
<p style="font-size: 12px; line-height: 1.4em; text-align: left; margin: 0px; padding: 2px 6px; word-wrap: break-word;"><a href="https://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/14af36e3.6d541b18.14af36e4.02f6f526/?pc=https%3A%2F%2Fitem.rakuten.co.jp%2Frakutenkobo-ebooks%2Ff9ee9c05f43c3b12a0879e6dca909487%2F&amp;m=http%3A%2F%2Fm.rakuten.co.jp%2Frakutenkobo-ebooks%2Fi%2F13390254%2F&amp;link_type=picttext&amp;ut=eyJwYWdlIjoiaXRlbSIsInR5cGUiOiJwaWN0dGV4dCIsInNpemUiOiIxMjh4MTI4IiwibmFtIjoxLCJuYW1wIjoiZG93biIsImNvbSI6MSwiY29tcCI6ImRvd24iLCJwcmljZSI6MSwiYm9yIjoxLCJjb2wiOjB9" target="_blank" rel="nofollow" style="word-wrap: break-word;">海鳴り忍法帖【電子書籍】[ 山田　風太郎 ]</a><br />
<span>価格：475円</span> <span style="color: #bbb;">(2018/2/4時点)</span></p>
</div>
<br />

<p style="font-size: 12px; line-height: 1.4em; margin: 5px; word-wrap: break-word;"></p>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>]]>
    </description>
    <category>ミステリー小説</category>
    <link>http://powaro.kakuren-bo.com/%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B0%8F%E8%AA%AC/mystery</link>
    <pubDate>Wed, 31 Jan 2018 12:39:48 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">powaro.kakuren-bo.com://entry/20</guid>
  </item>
    <item>
    <title>「不和の美ー１９」</title>
    <description>
    <![CDATA[１９<br />
<br />
　葬儀の日の翌朝、早く、ホテルにタクシーを呼んだ真田春也は、その脚で隣町まで向かった。<br />
<br />
　まだ朝は日差しが出ているのに肌寒く、春先だと追うのに、息が白くなっていた。<br />
<br />
　眠そうな目でバックミラー越しに春也の顔を何度もチラチラと見るタクシーの運転手は、町に唯一の信号機で停車すると、何を決心したように探偵に対して告げた。<br />
<br />
「お客さん、探偵なんだってね」<br />
<br />
　信号付近には大きな家が何軒かあり、それを見ながらその家は、どういった経緯で金儲けしているのだろうか、と考え込んでいた春也は、窓の外にあった視線を車内に戻して、バックミラー越しに運転手の、色が黒い顔を見つめた。<br />
<br />
「ええ。もっぱら浮気調査や迷い猫探しが仕事ですがね」<br />
<br />
　半分自分への皮肉も込めた様子で薄い笑みを浮かべた。<br />
<br />
「荒木さんところの事件を捜査してるんだろ？」<br />
<br />
　そう言うと信号が青に変わり、タクシーはゆっくりと発車した。<br />
<br />
「これからその調査に向かうんです」<br />
<br />
　眼を見開くように、興奮気味の顔をした探偵が運転手に言う。しかしどうして運転手が自らの事を探偵だとしり、荒木氏の事件を追っているのを知っているのか？<br />
<br />
　そんな疑問が瞬間的に脳裡を走り抜けたが、この町の性質上、噂話はすぐに広まることを理解した上で、自らに回答を出した。自分が探偵だって言うことも、ホテルに宿泊していることも、荒木氏の事件を捜査していることも、小さな町ではすぐに広まる。<br />
<br />
　火事が起こっただけで騒ぎになるほどの町なのだ、当然の結果であろう。<br />
<br />
　そうと分かってしまえば、探偵の性格は事件のことを口走らずにはいられなかった。<br />
<br />
「運転手さんは何か事件についての噂とか知りませんか？」<br />
<br />
　一直線のバイパスに抜けたタクシーは、そのまま隣町へと走ってく。<br />
<br />
　平日の朝は流石に田舎の小さな町でも通勤ラッシュなのだろう、車の通りが多かった。<br />
<br />
　浅黒いタクシーの運転手は、一瞬沈黙でハンドルを握っていたが、すぐに視線をチラリとバックミラー越しに探偵へ流すと、薄い唇を開いた。<br />
<br />
「その事なんですけどね、あの事件のあった日に、わたし見たんですよ。荒木さんの家の近くで不審な男を」<br />
<br />
　思わず咳き込みかけて目を見開いた探偵は、前の座席の間から顔を突き出した。<br />
<br />
「いつです！」<br />
<br />
　猛然と質問する探偵に、驚いてハンドルを揺らし、タクシーが蛇行する。<br />
<br />
　その遠心力で強制的に座席へと戻された探偵。<br />
<br />
　運転手は車を立て直し、額に薄く汗を滲ませていた。もちろん冷や汗である。<br />
<br />
　車を安定させてから、また運転手は唇を開いた。<br />
<br />
「警察の発表だと荒木さんが殺された時間は午前５時から６時の間ってことだったんですけどね、わたしその日は隣町で朝方まで飲んでた客を拾って、町まで戻ったんですよ。その帰り道で荒木さんの家の近くを抜けた時に、男の人が歩いてたんです。老人しかいないような町ですから、朝早くに若い男の人があるいてるなんて、珍しいと思ってたら、こんなことになってしまって」<br />
<br />
　眉毛に困った様子を覗かせる運転手。<br />
<br />
「それで、顔はみたんですか？」<br />
<br />
　運転手にずかずかと矢継ぎ早に質問を投げかける探偵に、運転手の心情を重んじる感情は当然このときはなく、ただ事件に対する意識だけで言動を続けていた。<br />
<br />
「背格好は？」<br />
<br />
　自分が責められているような感覚になる運転手は、何度もバックミラーごしに探偵の顔をみながら、事件当日のことを思い返しながら口にした。<br />
<br />
「顔は帽子を深く被っていたから見えなかったんですがね、小柄な男の人でした」<br />
<br />
「男になにか特徴は？」<br />
<br />
「あまりマジマジと見た訳じゃありませんから、そこまではちょっと。ジーンズに黒いブーツ、ダウンジャケットを着て、黒い帽子を深く被ってました」<br />
<br />
　新たな目撃情報に興奮気味の探偵は、容疑者たちの顔を脳裡に何度も巡らせる。<br />
<br />
「このこと、警察には言ったんですか？」<br />
<br />
　と、その時隣町の目的地へ到着したタクシーは、ブレーキを踏んで、ハザードランプを明滅させて停車した。<br />
<br />
「警察には話しました。容疑者は男だ、とかいっていましたけど。わたし、間違ったことをしたんでしょうか？」<br />
<br />
　探偵は不思議そうな顔をした。<br />
<br />
「警察に証言することは、悪いことではないです。どうしてそう思うんですか？」<br />
<br />
「犯人が町の誰かなら、逮捕されるってことですよね？　なんか同じ町の人間を売ったような気分で、あまり気持ちがよくないんです」<br />
<br />
　探偵はマジマジと運転手の顔をのぞき込んだ。<br />
<br />
「殺人は法律違反です。人を殺すことは倫理に反します。間違いなく殺人犯は悪人なんです。人の心情とは無関係なんですよ。罪は罪なのです。殺人を犯した人間は、罪を償わなければならない。貴方は間違ったことはしていません」<br />
<br />
　そういうと探偵はタクシーを待たせて、目的地の前に立った。<br />
<br />
　そこは隣町の小さなスナックの前であった。<br />
<br />
<br />
<br />
第２０回へ続く<br />
<br />
　<br />
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー<br />
ー宣伝広告ー<br />
<br />
東野圭吾さんの著書がまた映画化されるようです。<br />
筆者も期待が大きいです。<br />
<br />
<br />

<table border="0" cellpadding="0" cellspacing="0">
<tbody>
<tr>
<td>
<div style="border: 1px solid #000000; background-color: #ffffff; width: 138px; margin: 0px; padding-top: 6px; text-align: center; overflow: auto;"><a href="https://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/14ac6038.d83725d5.14ac6039.769145be/?pc=https%3A%2F%2Fitem.rakuten.co.jp%2Fbook%2F14398426%2F&amp;m=http%3A%2F%2Fm.rakuten.co.jp%2Fbook%2Fi%2F18144173%2F&amp;link_type=picttext&amp;ut=eyJwYWdlIjoiaXRlbSIsInR5cGUiOiJwaWN0dGV4dCIsInNpemUiOiIxMjh4MTI4IiwibmFtIjoxLCJuYW1wIjoiZG93biIsImNvbSI6MSwiY29tcCI6ImRvd24iLCJwcmljZSI6MSwiYm9yIjoxLCJjb2wiOjB9" target="_blank" rel="nofollow" style="word-wrap: break-word;"><img src="https://hbb.afl.rakuten.co.jp/hgb/14ac6038.d83725d5.14ac6039.769145be/?me_id=1213310&amp;item_id=18144173&amp;m=https%3A%2F%2Fthumbnail.image.rakuten.co.jp%2F%400_mall%2Fbook%2Fcabinet%2F4978%2F9784062934978.jpg%3F_ex%3D80x80&amp;pc=https%3A%2F%2Fthumbnail.image.rakuten.co.jp%2F%400_mall%2Fbook%2Fcabinet%2F4978%2F9784062934978.jpg%3F_ex%3D128x128&amp;s=128x128&amp;t=picttext" border="0" style="margin: 2px;" alt="[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]" title="[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]" /></a>
<p style="font-size: 12px; line-height: 1.4em; text-align: left; margin: 0px; padding: 2px 6px; word-wrap: break-word;"><a href="https://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/14ac6038.d83725d5.14ac6039.769145be/?pc=https%3A%2F%2Fitem.rakuten.co.jp%2Fbook%2F14398426%2F&amp;m=http%3A%2F%2Fm.rakuten.co.jp%2Fbook%2Fi%2F18144173%2F&amp;link_type=picttext&amp;ut=eyJwYWdlIjoiaXRlbSIsInR5cGUiOiJwaWN0dGV4dCIsInNpemUiOiIxMjh4MTI4IiwibmFtIjoxLCJuYW1wIjoiZG93biIsImNvbSI6MSwiY29tcCI6ImRvd24iLCJwcmljZSI6MSwiYm9yIjoxLCJjb2wiOjB9" target="_blank" rel="nofollow" style="word-wrap: break-word;">祈りの幕が下りる時 （講談社文庫） [ 東野 圭吾 ]</a><br />
<span>価格：842円（税込、送料無料)</span> <span style="color: #bbb;">(2018/1/31時点)</span></p>
</div>
<br />

<p style="font-size: 12px; line-height: 1.4em; margin: 5px; word-wrap: break-word;"></p>
</td>
</tr>
</tbody>
</table>]]>
    </description>
    <category>ミステリー小説</category>
    <link>http://powaro.kakuren-bo.com/%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B0%8F%E8%AA%AC/misuteri</link>
    <pubDate>Sat, 12 Nov 2016 04:51:42 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">powaro.kakuren-bo.com://entry/19</guid>
  </item>
    <item>
    <title>「不和の美ー１８」</title>
    <description>
    <![CDATA[<h3>18<br />
<br />
　荒木義男の葬儀が行われたのは、死後４日後のことであった。<br />
<br />
　火葬後、葬儀が行われる風習のある小さな田舎町では、３日後には少なくとも葬儀が行われるのだが、殺人事件の場合、司法解剖が法的に義務づけられていたこともあり、荒木義男の遺体が邸宅へ帰宅したのが翌日であったから、通夜、火葬と遅れていたのである。<br />
<br />
　喪主を務める息子の荒木昭雄、親戚にあたる筒井美咲、昭雄の妻、２人の子供など親類や町の人たちが集まる葬儀は、町のお坊さんを読んで、広い邸宅の座敷で行われた。<br />
<br />
　故人が残した財産管理、相続関係などを任されることとなった弁護士の古川栄太郎は、葬儀の間も親類などとの書類の話などで忙しくしていた。<br />
<br />
　この事件にそうした古川の仲介でかかわることになった若い探偵、真田春也の荷物には葬儀の準備などはまったくなかったため、葬儀に出席する格好も用意できぬまま、蚊帳の外という感じで邸宅の個室に半ば、古川の言いつけで軟禁状態にあった。<br />
<br />
　彼の性格上、事件関係者がこうして集合した葬儀は、絶好の聞き込み機会であり、例のごとく聞き込みをする恐れがあったせいもあり、古川はいつも以上に彼にくぎを刺していたのであった。<br />
<br />
　飛ぶ鳥の羽をもがれたかのような春也は、古い資料などを置く書庫に臨時に設置された椅子とテーブル、美咲が気を聞かせて用意したコーヒーとバームクーヘンを前に、ふすまの向こう側であわただしく動く、近所の奥様たちの声色を聞いていた。<br />
<br />
　小さい窓から外を見れば、警察官らしきスーツ姿の男たちが道路で状況を眺めている。<br />
<br />
　陣頭指揮をとるのは、事件初日に事件現場を荒らす探偵を一喝した三田恭一警部だ。<br />
<br />
　何をしてよいものか、と思いつつも探偵の脳裡には常に事件のことが渦巻き、自然とふすまの外へ意識が行っていた。<br />
<br />
　そんな中、トイレへ向かおうとふすまを少し開けた時のことである。<br />
<br />
「警察に言わなかったの？」<br />
<br />
　と女性の声が書庫前の廊下に響いた。<br />
<br />
「ちょっと、声が大きいわよ」<br />
<br />
　そう制する声には聞き覚えがあった。筒井美咲の居酒屋で酔って噂話を口にする島田秋子を止めていた同僚の吉岡美穂（４６）の声である。<br />
<br />
　ふすまを少し開け、顔を少し出す探偵の目に、複数人の喪服姿の女性が廊下で立ち話をしているのが見えた。<br />
<br />
　吉岡美穂以外の女性の顔に見覚えはないが、葬儀の手伝いに駆り出された近所の奥様たちと探偵は推測した。<br />
<br />
　女性によくある、例の噂話というやつであろう。<br />
<br />
　吉岡美穂は話を続ける。<br />
<br />
「うちの社長は朝いちばんに事務所の鍵を開けたって警察には言ってたけど、あんなのでたらめよ。だって荒木さんが殺された日に事務所を開けたの、私だもの」<br />
<br />
　思わず探偵は目を見開き、女性たちの会話に神経を研ぎ澄ませて集中させた。<br />
<br />
　奥様の１人が美穂に聞く。<br />
<br />
「じゃあ朝早くからどこに行ってたのかしら。伊美さんって仕事人間って感じだけど」<br />
<br />
　さらに吉岡美穂の声は小声になる。<br />
<br />
「愛人のところよ、愛人。隣町でスナックをやってる女に人らしいけど、その店を開店する資金をだしたのも、社長らしいわよ」<br />
<br />
　事務員は自らの社長の秘密を暴露した。<br />
<br />
「きっとその愛人のところに泊まったんでしょ」<br />
<br />
「奥さんは知ってるの？」<br />
<br />
　別の奥様が伊美夫人がその事実を認識しているのか、興奮気味に美穂へ確認する。<br />
<br />
　探偵も耳を大きくしながら、その事実確認を心中で希望していた。<br />
<br />
「知ってると思うわ。一度、そのことで会社の事務所で言い争ってるのを見たことあるもの」<br />
<br />
「だって、奥さんも社長が会社に出かけたって警察には言ったんでしょ？　嘘を言ったってこと？」<br />
<br />
　主婦の情報網恐るべし。そうした情報まで認識していたのである。<br />
<br />
　吉岡美穂は首を横に振った。<br />
<br />
「そこまでは知らないけど、自分の夫が浮気して朝帰りなんて、恥ずかしくて私なら言えないわ」<br />
<br />
　と、少し嫌味っぽく言った。<br />
<br />
「おお～い、ビールもってきてくれ」<br />
<br />
　すると奥の座敷から男の声がして、美穂が返事を返す。<br />
<br />
「男は飲んでるだけでいいから、のんきよねぇ」<br />
<br />
　吉岡美穂のため息で女たちの井戸端会議は終了した。<br />
<br />
　しかし吉岡美穂の証言は探偵の推理を大きく加速させるものとなった。<br />
<br />
　それから数時間、夕刻になるころ、1人の男が屋敷を訪ねてきた。町で唯一の靴販売店の主人、里見源太（６２）であった。<br />
<br />
　この下駄屋の主人は被害者の一人息子、昭雄氏が被害者の殺害時刻に散歩に出ていたと証言した人物である。<br />
<br />
　初老にしては長身で、襖を開けて顔を覗かせる探偵よりも大きく見えた。<br />
<br />
　自らの無実を証言した人物の訪問に、昭雄はえらく喜び、焼香の後は畳の大きな部屋でビールをごちそうしていた。<br />
<br />
　が、数分も経たないうちに下駄屋の主人はそそくさと帰ろうとした。<br />
<br />
　探偵が襖の端から覗く限りでは、どこか落ち着きのない様子であった。<br />
<br />
「里見さん。もう帰るのかい？」<br />
<br />
　昭雄が近づいていくと、下駄屋の主人は広い玄関、廊下の先に誰も居ないのを確認すると、焦った様子の口調で口早に言った。<br />
<br />
「俺、勘違いしてた。あんたを見たのは朝の7時近くで、荒木さんが殺された時間にあんたを見たっていうのは、嘘だったんだ。警察に言ったあと、思い出したんだよ！」<br />
<br />
「な、なにを今更。それこそ勘違いじゃないか。確かに里見さんとあったのは7時近かったけど、6時だったのは確かだろ？　変なこと言い出すのは止めてくれよ」<br />
<br />
　と、高い位置にある肩を叩く昭雄。<br />
<br />
「警察に言うべきなんじゃないのか？」<br />
<br />
　その一言が昭雄の短気に火を点けた。<br />
<br />
「馬鹿なでたらめを言わないでくれ！」<br />
<br />
　この声は広い屋敷に轟くには十分な声量だった。<br />
<br />
　奥の座敷から主人の妻が駆けつけてきた。 その顔は血相変えている。自らの主人の声に驚きを隠せないでいた。<br />
<br />
「 今更それはないですよ 。警察に言うなんて、ふざけないでください」　<br />
<br />
　昭雄は さっきまでの荒げた声とは違った、落ち着いた声でありながら、怒りを込めた声色で言い放った。<br />
<br />
　下駄屋の主人は おどおど しながら 玄関を開けて 逃げるように屋敷から出て行った。玄関前に待ち受ける警察官に話しかけることもなく昭雄の言った通り、何事もなかったかのように、その場をあとにした。<br />
<br />
　襖から顔を出していた探偵はゆっくりと 頭を 引っ込めると、興味深げに顎に手を当て、少し考え込んだ 。<br />
　<br />
　アリバイのない人間がまた一人、彼の前に現れたことになる。これは実に楽しく 彼の思考はアドレナリンであふれていた。<br />
<br />
　書斎に容易された椅子に腰掛け、自らが常備している手帳を取り出すと、関係者の関係性をメモしたページをめくる。<br />
<br />
　そこに書かれた字はメモ帳の点線から大きく逸脱した、ミミズが這ったような字というのにふさわしい汚さで殴り書かれていた。<br />
<br />
　彼は自分の耳にしか聞こえない独白で、それを読み上げていく。<br />
<br />
「被害者の荒木義男が殺害された時刻が５時から６時の間。その時間帯に息子の昭雄は散歩をしていたと言っているが証言は訂正された。建設会社の社長伊美徹も事務所の鍵を開けるのを日課としているにもかかわらず、愛人のところへ行っていた。二人にアリバイがないとなると、容疑者は二人･･････いいや佐藤誠という線もあるということか？　美咲を思うあまりにって可能性も捨てきれない」<br />
<br />
　こうした独白を一人、書斎で行っている内に、春の夕方がやってきた。<br />
<br />
　襖の向こう側から声が聞こえないということは、客もほとんど帰宅したのであろう。<br />
<br />
　暗くなり始めた外の庭を眺めながら、警察の三田恭一警部の姿がまだ在るのを、玄関の明かりに照らされて認めた。<br />
<br />
　靴屋の主人の証言が偽証であることを告げた方がようのではないだろうか？<br />
<br />
　そう考えながらも、探偵は自らが事件の真相に近づきつつあることに、優越感を抱いていた。<br />
<br />
　そしてある欲求に動かされた。犯行現場が見たい。<br />
<br />
　自らを抑えるという概念を持たない真田春也は、襖を軽く開け、周囲に誰も居ないことを確認すると廊下を忍び足で進んだ。<br />
<br />
　広い座敷の横を通って行く。飲みかけのビールが入ったコップやビール瓶がテーブルの上に置きっ放しである。残り僅かになった寿司や煮物の皿が並ぶが、人の姿はなかった。葬儀に来た客たちは帰ったのだろう。<br />
<br />
　座敷の横を抜け玄関の前の廊下を左に曲がると、木製の重々しい扉が凜然と彼を迎えた。<br />
<br />
　右側の窓からは外が見えるが彼に気づいている警察官はいない。周囲を見回したり、通りかかった近所の人間に話しを聴いている様子だ。<br />
<br />
　チャンスとばかりにドアを引き、中へ足を踏み入れた。<br />
　<br />
　ところが誤算だったのは、夕陽が山の後ろに沈んだことだ。<br />
<br />
　書斎の中は暗く、なにも見えなかった。<br />
<br />
　電気、電気と心中で呟きながら入り口の壁を手探りで探す。が、スイッチは指先に引っかからない。<br />
<br />
　顔を廊下に出して廊下側の壁も見るが電気のスイッチは探し当てられなかった。<br />
<br />
　弱った、と頭をボリボリと搔いていたその時、<br />
<br />
「また事件の事ですか、探偵さん」<br />
<br />
　とあでやかな声が背中を撫でた。<br />
<br />
　蘭の花のような甘い香りがして振り返ると、筒井美咲が彼を見て微笑んでいた。<br />
<br />
　和装の喪服姿もまた、艶やかで夜に栄えているように見えた。<br />
<br />
「古川さんにまた怒られますよ」<br />
<br />
　と少し悪戯っぽくいうと、書斎の中に入ってきて、右側の大きな机の横の壁に手を伸ばした。<br />
<br />
　すると漆黒の世界に光が点灯した。<br />
<br />
　変わったところに電気のスイッチがあるものである。<br />
<br />
　軽く頭を下げて美咲に礼をすると、さっそく事件現場の検証を始めた。<br />
<br />
　すでに警察があらかた操作したのだろう、片付けては行ったと思われるが何処か乱雑に散らかっている印象を彼は受けた。<br />
<br />
　真っ先に探偵の目が行ったのは、やはり織部焼きが並ぶ棚であった。<br />
<br />
　コレクションの皿や茶碗が並ぶ中で、やはり凶器に使われた織部焼きが置いてあった場所だけが空間としてポッかり空いている。<br />
<br />
　棚の観音開きの扉を開き、じっと織部焼きを見つめる。そしてさらに書斎の中を一瞥した。<br />
<br />
　すると筒井美咲は机の縁をゆっくりと撫で、その手で椅子を引くと、疲れた様子で叔父が愛用していた椅子に腰掛けた。<br />
<br />
「叔父は誰も書斎には入れなかったんです。息子の昭雄さんですらも」<br />
<br />
「ええ、その話はいろんな方から聞きました。どうしてそこまで義男氏は人を遠ざけて生活していたのでしょう？」<br />
<br />
　机の引き出しをゆっくり開け、空になったそれを探偵に見せた。<br />
<br />
「ここに引き出しには多くの書類が入っていたと昭雄さんから聞きました。不動産関係の書類や株式に関するものだったとか。叔父はきっとお金に群がってくる人間を遠ざけたかったんだと思います。生前、叔父が言っていたんです。［人間は所詮、金に集まる生き物だ］って。ですから人を信用していなかったんじゃないかしら」<br />
<br />
　織部焼きを見つめながら、探偵は軽く頷いた。<br />
<br />
「もっとも大事な場所だからこそ、特に書斎には人を入れたくなかった、という訳ですか。ですがここが事件現場となった。誰かが確実に義男氏を殺害した。人を信用していなかった被害者が人を自らのテリトリーに入れた。これには意味があるんだと思います」<br />
<br />
　探偵はそういうと、織部焼きの棚をゆっくりと閉じた。<br />
<br />
<br />
<span style="font-size: x-large;"><b><span lang="EN-US" style="font-family: 'ＭＳ ゴシック';">◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆</span></b><b><span lang="EN-US" style="font-family: 'ＭＳ ゴシック';">◆◇<br />
<br />
</span></b></span><br />
<a href="http://rpx.a8.net/svt/ejp?a8mat=2HZ876+461ARM+2HOM+BW8O1&amp;rakuten=y&amp;a8ejpredirect=http%3A%2F%2Fhb.afl.rakuten.co.jp%2Fhgc%2F0eac8dc2.9a477d4e.0eac8dc3.0aa56a48%2Fa15112919756_2HZ876_461ARM_2HOM_BW8O1%3Fpc%3Dhttp%253A%252F%252Fbooks.rakuten.co.jp%252Frb%252F13609903%252F%26m%3Dhttp%253A%252F%252Fbooks.rakuten.co.jp%252Frb%252F13609903%252F" target="_blank" style="font-size: x-large;">映画化も決まったミステリー小説の上巻。この力は凄い！</a> <img border="0" width="1" height="1" src="https://www13.a8.net/0.gif?a8mat=2HZ876+461ARM+2HOM+BW8O1" alt="" style="font-size: x-large;" /></h3>
<span style="font-size: x-large;"> <a href="http://rpx.a8.net/svt/ejp?a8mat=2HZ876+461ARM+2HOM+BW8O1&amp;rakuten=y&amp;a8ejpredirect=http%3A%2F%2Fhb.afl.rakuten.co.jp%2Fhgc%2F0eac8dc2.9a477d4e.0eac8dc3.0aa56a48%2Fa15112919756_2HZ876_461ARM_2HOM_BW8O1%3Fpc%3Dhttp%253A%252F%252Fbooks.rakuten.co.jp%252Frb%252F13609904%252F%26m%3Dhttp%253A%252F%252Fbooks.rakuten.co.jp%252Frb%252F13609904%252F" target="_blank">こちらは下巻。最後の結末を知った時、胸が苦しくなる。</a> <img border="0" width="1" height="1" src="https://www10.a8.net/0.gif?a8mat=2HZ876+461ARM+2HOM+BW8O1" alt="" /><br />
</span><br />
<span style="font-size: x-large;"> <a href="http://rpx.a8.net/svt/ejp?a8mat=2HZ876+461ARM+2HOM+BW8O1&amp;rakuten=y&amp;a8ejpredirect=http%3A%2F%2Fhb.afl.rakuten.co.jp%2Fhgc%2F0eac8dc2.9a477d4e.0eac8dc3.0aa56a48%2Fa15112919756_2HZ876_461ARM_2HOM_BW8O1%3Fpc%3Dhttp%253A%252F%252Fbooks.rakuten.co.jp%252Frb%252F14309560%252F%26m%3Dhttp%253A%252F%252Fbooks.rakuten.co.jp%252Frb%252F14309560%252F" target="_blank">東野圭吾最新作！</a> <img border="0" width="1" height="1" src="https://www13.a8.net/0.gif?a8mat=2HZ876+461ARM+2HOM+BW8O1" alt="" /></span>]]>
    </description>
    <category>ミステリー小説</category>
    <link>http://powaro.kakuren-bo.com/%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B0%8F%E8%AA%AC/%E3%80%8C%E4%B8%8D%E5%92%8C%E3%81%AE%E7%BE%8E%E3%83%BC%EF%BC%91%EF%BC%98%E3%80%8D</link>
    <pubDate>Mon, 13 Jun 2016 03:46:30 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">powaro.kakuren-bo.com://entry/18</guid>
  </item>
    <item>
    <title>「不和の美ー17」</title>
    <description>
    <![CDATA[<h3><a target="_blank" href="//powaro.kakuren-bo.com/File/3e7eef3b.jpeg" title=""><img src="//powaro.kakuren-bo.com/Img/1458557066/" alt="" /></a> <br />
17<br />
<br />
　ホテルでの食事を終えた探偵と弁護士の取り合わせは、夜の町へとタクシーで出向いた。<br />
<br />
　と言っても目的は古川栄太郎が心奪われる美人が経営する居酒屋であった。<br />
<br />
　赤提灯が春風に揺れる夜は未だ冬の風の匂いがして、肌寒さが肌を刺した。<br />
<br />
　２人は凍えるようにして店内に入っていくと、しとやかで百合の花が香るような声色が迎えた。<br />
<br />
「いらっしゃいませ。あら、来てくださったんですか？」<br />
<br />
　うれし気に微笑する筒井美咲の笑みは、事件にしか興味を抱かない真田春也の探偵心をも、思わずドキッとさせる魅力が醸し出されていた。<br />
<br />
　店内は昼に訪れたときとはまた雰囲気がガラリと異なり、本当に居酒屋なのだな、という一種の酒の香りが漂っていた。<br />
<br />
　店内を見回すと奥のテーブル席に男性が１人と、カウンターに女性客が２人。そのさらに奥の座敷間には、数人の団体客がいるらしく、にぎやかな声が聴こえ漏れていた。<br />
<br />
「こちらへどうぞ」<br />
<br />
　和服の袖を片手で押さえ、白く長い指先で町の外から来た２人を、店の懐へといざなった。<br />
<br />
　女性客２人から少し離れたカウンター席に腰掛けると、ホルモンの煮込みだろうか、はたまたサバの味噌煮か、味噌の香ばしいかおりが、さっきのホテルでの食事を忘れさせた。<br />
<br />
「おふたりともビールでいいかしら？」<br />
<br />
　はつらつとした女将の声色は、飲み物がなんであるかを尋ねてくる。<br />
<br />
「私は地酒をもらおうかな」<br />
<br />
　町がもっとも力を入れる産業の１つがこの地酒作りである。古川栄太郎は前々からこの町の地酒が存外に飲み心地が良いのを知っていた。<br />
<br />
「冷でいいかしら」<br />
<br />
　弁護士はうれし気に美咲の笑みをニヤニヤと見据えた。<br />
<br />
「真田さんは若いからチューハイがいいかしら？」<br />
<br />
　カウンターのメニューを凝視していた探偵は無表情を上げ、<br />
<br />
「ハイボールと若鳥のから揚げをください」<br />
<br />
　と女将に告げた。<br />
<br />
　古川弁護士はこれが彼のいつものスタイルなのを分かっていた。幾度か彼とともに旅をしたことがあったが、決まってどこへ行こうとも地元の東京のなじみの居酒屋で注文するものと何一つ変わらず、いつもハイボールとから揚げなのだ。<br />
<br />
　一度など四万十川まできたのだから、名物のアユで一杯、と提案したことがあった。しかし探偵はハイボールとから揚げを崩すことなく、いつもの飲み方をしたのである。<br />
<br />
　東北地方の片田舎でもその姿勢を崩すことはなかった。<br />
<br />
「はい」<br />
<br />
　微笑みを返すとカウンターのすぐ裏で彼女は地酒の支度をした。<br />
<br />
　元から米がおいしいと評判の地方であった町で、数年前より地元の湧水を利用した酒造をはじめ、町おこしに一役買っていた。<br />
<br />
　亡くなった荒木氏もこの地酒が好きで、古川が来る度、地酒をふるうくらいである。<br />
<br />
　きれいなカラスに入れられた地酒の冷を出され、おちょこに女将自ら注いだ。<br />
<br />
　初老の弁護士は照れてしまい、頬を赤らめていた。<br />
<br />
　それを興味なく一瞥した探偵は、店内を見回すと壁際に一輪の花が添えられていた。<br />
<br />
　花の種類は分からなかったが、花瓶は彼の興味を大いに引いたのである。<br />
<br />
「女将さんも織部焼に興味があるんですか？」<br />
<br />
　地酒の入った入れ物を弁護士の横に置き、白い頬を上げ、探偵が指さす先の一輪挿しを見た。<br />
<br />
「ああ。あれは叔父からいただいたものなんですよ」<br />
<br />
　そこで弁護士がはたとわれに返り、今日の出来事が脳裡を走り抜けた。<br />
<br />
「今日ぐらい休んだらよかったんじゃ。荒木氏の葬儀の手筈もあることだし」<br />
<br />
「いいえ。こんなときだからこそ、仕事をしているほうが気分が紛れて。それにお葬式の準備なら昭雄さんがしてますから」<br />
<br />
　だがこのときまだ１人息子、荒木昭雄の容疑は晴れておらず、事件現場となった荒木邸の前には、複数人の警察官が待機していた。<br />
<br />
　ふと一輪挿しを見上げた美咲の表情には、いつもの華やかさはなく、壁際の一輪挿しのように、物かなしげに探偵には見えた。<br />
<br />
「結局、叔父の趣味にはついていけませんでした。私に骨董品のことをあれこれ教えてくれてたんですけれどね。今となっては、もっとよく勉強して、叔父と話しをすればよかったと思っているんですよ」<br />
<br />
　探偵の隣では同じ思いで地酒を一気に飲み干し、おちょこを空にする弁護士の姿があった。<br />
<br />
「古田織部という人はですね――」<br />
<br />
　こういった話をすると止まらないのを弁護士は知っていたが、探偵のスイッチがひとたび入ると、何を横から挟もうと唇の動きは止まらなかった。<br />
<br />
「本当の名は古田重然といいまして、生れは美濃国、今の岐阜県南部に位置しています。家紋は三引両でして、山口城城主、古田重安の弟、古田重定の子として生まれました。古田家は元々、美濃国の守護大名、土岐氏に仕えていたのですが、時代は織田信長が戦国時代の中心となり、美濃国を収めることになったので、織田家の家臣となったのです。武将としての才覚もあったそうで、織田信長の嫡男、信忠の使番、荒木村重の謀反の際には義兄を引き戻すことに成功し、豊臣秀吉、明智光秀の軍勢にも加わり功績をあげているんですよ」<br />
<br />
　女将としてこうした客の扱いには慣れているのか、美咲はハイボールとから揚げを速やかに用意すると、彼の話を聞きながら、彼の前に並べた。<br />
<br />
　しかし探偵は自らの興味の方向にしか話をもっていかず、出されたものに手を付けなかった。<br />
<br />
「本能寺の変のあとは、豊臣秀吉が天下を取ると悟ったのでしょう、配下となって山崎の戦い、伊勢亀山城の戦い、九州平定、小田原討伐などにも参加しています。<br />
これは歴史の教科書にも乗るほどの大きな戦ばかりなんですよ。これだけの功績をあげたのですから、扱いも当然なんですが、秀吉は彼に織部の官位を与えました。これが古田織部の元となっているんです」<br />
<br />
　ここで初めて彼はハイボールに口をつけ、軽く喉を潤した。<br />
<br />
「天正１０年からは千利休の弟子となり、茶道の道へと進みます。しかしながらその才能は利休とは対照的に、静かなる美を求めるのではなく、もっと独自の美意識があったんです。利休はある時、茶道具の木目が気に食わず捨てようとしました。けれども織部はそれを利休からもらい受け、愛用したそうです。生の中に動を見たとのこと。利休の死後は秀吉がえらく気に入ったそうで、天下一の茶人となりました。織部が好むものは天下で流行る。織部好みとまで言われ、彼が最先端の流行をきめていたんです。朝廷や貴族、寺社へも影響を及ぼすなど、間違いなく天下の第一人者となっていました。関ケ原の戦いでは東軍に入り、勝利を収めました。ですが大阪冬の陣、夏の陣を通じて徳川方についていた織部が豊臣へ内通したとの嫌疑をかけられ、切腹させられたんです。彼は弁明は一切せず、切腹に従ったとされています。<br />
　彼の残した「破調の美」はその後も受け継がれているんです。調和されていない美。これに俺はひかれたんですよ」<br />
<br />
　言い終えるとまたハイボールで喉を潤した。<br />
<br />
　横でため息交じりに首を横に振る弁護士であった。<br />
<br />
　これを見て、２人を見比べた美咲は、クスクスと口元を抑えて笑っていた。<br />
<br />
「面白いお方ですね」<br />
<br />
　弁護士に笑いかける女将の表情は、やはり男の本能を爪で掻きたてるものがあった。<br />
<br />
　弁護士は地酒のせいだけではない頬に赤らみを帯び、女将から思わず視線を恥ずかし気にそらした。<br />
<br />
「彼はいつもこうなんですよ。自分の話以外に興味はなく、事件と歴史以外に興味すら抱かない。出会った時から変わってましたからね」<br />
<br />
「お二人はどこでお知り合いに？」<br />
<br />
　地酒を弁護士へ注ぎながら女将が尋ねる。<br />
<br />
「数年前でしたかね。東京である殺人事件がありまして。骨董品の甲冑を集めるのが趣味の男性がいましてね、その男性が殺害されたんですよ。被害者の知り合いだった彼が事件現場にずかずかと入ってきましてね。被害者と面識があった私が現場に居合わせて、現場をまるで荒らすように警察官の静止もきかず、今回と同じように事件を捜査したんです」<br />
<br />
　自らのことを話すのを好まないと見えてか、探偵はさっきまでの饒舌は影もなくなり、若鳥のから揚げを一口で口に放り入れてしまった。<br />
<br />
「事件は解決したんですか？」<br />
<br />
　女将の問に、弁護士は軽くうなづいた。<br />
<br />
「ええ、見事に。骨董品収集の愛好家仲間の犯行でした。被害者が所有していた赤い甲冑が加害者の好きな戦国武将のものだったらしく、それを奪いたいがために殺害したとのことでした」<br />
<br />
「山県昌景の甲冑ですからね。ほしいのもわかります。彼は武田信玄の四天王と呼ばれるほどの名称ですから。黒澤明監督の「影武者」という映画では、大滝秀治が演じていました」<br />
<br />
　ハイボールでから揚げの油を流し、探偵は口早に告げた。<br />
<br />
「この調子で解決したんです」<br />
<br />
　と、苦笑いをした弁護士であった。<br />
<br />
「きっと叔父あえば話が合ったでしょうね。叔父もそうした話が大好きでしたから」<br />
<br />
　そういうと奥の調理場にかけている鍋のことを思い出し、<br />
<br />
「ちょっと失礼しますね」<br />
<br />
　と、のれんで仕切られた調理場へと入っていった。<br />
<br />
　その時である。<br />
<br />
「生きてたとしてもあの荒木さんが他の人と盛り上がるなんで、ありえないわよ」<br />
<br />
　カウンターの離れた席に座っていた女性の１人が、彼らに向かって話しかけてきた。<br />
<br />
「あの人はねぇ。他人を寄せ付けない、独特のオーラっていうか、そういうところがあったのよ。個人を悪くは言いたくないけどね」<br />
<br />
　酔った様子がある女性は、伊美徹の会社事務所にいた、事務員の１人であった。横の女性も同じく事務所で見かけた事務員である。<br />
<br />
　会社終わりに同僚同士で飲みにきたのである。<br />
<br />
「まぁ、殺されて自業自得っていうかさ、あの人にこの町でいい印象を抱いている人なんてなかったと思うわよ。私だって一度、ひどい目にあったんだから」<br />
<br />
　半分、ろれつが回っていない口調で彼女は言った。<br />
<br />
「ちょっとやめなさいよ。今日、そんな話しなくてもいいじゃない、しかも美咲ちゃんのお店で」<br />
<br />
　後ろの女性が酔っている彼女を止めるようにいうが、さらにレモンサワーを飲み、彼女は拍車がかかるようにうなった。<br />
<br />
「いいじゃない。こんな日だから言わせてよ。私、ずっとあの人には言いたいことが山ほどあったんだから」<br />
<br />
　というと探偵の顔を凝視して、彼女は口早に言った。<br />
<br />
「口うるさい人だったのよ。うちの会社は仕事の関係上、会社の敷地内で木材の加工とかもするんだけど、何度、あの人が近所迷惑だ、うるさいって怒鳴り込んできたことか。一度なんて、頭を下げる私を指さして、頭を下げるだけなら人形でもできる、そんな仕事しかできないのなら辞めてしまえって言われたのよ。信じられる？　こっちは仕事で仕方なく頭を下げてるのにさ」<br />
<br />
　後ろの女性はこうした過激な言動を親族親族の店で口にする同僚と、のれんの奧を冷や冷やと見比べていた。<br />
<br />
　しかし同僚の口は止まることをしらない。<br />
<br />
「この町であの人を良く思っている人っていたのかしら。何かあるとすぐにクレームよ。近所の子供がうるさい、車を夜走らせるな、猫が敷地に入ってくる。ほっと近所迷惑な爺さんだったわ」<br />
<br />
「ちょっと秋子さん、飲みすぎなんじゃないですか？」<br />
<br />
　煮物を小鉢に入れてもってきて、秋子の前に置く美咲は、少し怒っている表情だった。<br />
<br />
「あら、聞こえてたのね」<br />
<br />
　そういって島田秋子は舌を出した。<br />
<br />
「そろそろ帰ったらどうですか、美穂さんも旦那さん、待ってるんじゃありません？」<br />
<br />
　同僚の吉岡美穂に美咲は顔を向けた。<br />
<br />
「家の旦那なら同僚と宴会だそうよ」<br />
<br />
　そういって美穂は皮肉たっぷりに笑った。<br />
<br />
「あら、そういう美咲ちゃんはどうなの？　彼、今日も来てるじゃない」<br />
<br />
　と、奥のテーブル席で１人飲んでいる男を横目で秋子は見た。<br />
<br />
「荒木さんはいないんだし、このまま結婚しちゃえばいいのに」<br />
<br />
「ちょっと秋子さん、怒りますよ」<br />
<br />
　そういっている彼女の顔には、本気の怒りが見て取れた。<br />
<br />
　奥まですっかり声は通っていたらしく、男はまだ半分も減っていない焼酎をそのままに、席を立つとカウンターにお金を置いた。<br />
<br />
「女将さん、ごちそうさま。また来るよ」<br />
<br />
「ごめんなさい、佐藤さん」<br />
<br />
　男は静かな微笑だけを浮かべ、店の木目がきれいな引き戸を開けて、帰っていった。<br />
<br />
「あらら、帰っちゃった」<br />
<br />
「秋子、私たちも帰りましょう。あんた、ちょっと酔っ払いすぎよ」<br />
<br />
　美咲の怒った表情を見て取ったらしく、吉岡美穂が促す。<br />
<br />
「まだ大丈夫よ」<br />
<br />
　と、コップを持つ秋子。<br />
<br />
　その手を抑え、美穂は無理に彼女を立たせ、バッグを持たせた。<br />
<br />
「美咲ちゃん、また来るわね」<br />
<br />
　美穂がお金をカウンターに置くと、無理に秋子を引っ張り、帰って行くのだった。<br />
<br />
「すみません、騒がしくて」<br />
<br />
　美咲が探偵と弁護士に苦笑いして頭を下げた。<br />
<br />
　すると座敷席から声がして、彼女は奥へと呼ばれて行ってしまった。<br />
<br />
「荒木氏に恨みを抱く人は多いようですね」<br />
<br />
　ハイボールを口にして、頭の中で再び事件へと探偵の関心が向けられた。<br />
<br />
「友人は悪く言いたくはない。だが、町の人たちの心情はさっきの彼女が言っていたとおりなのかもしれないな」<br />
<br />
　少し悲しそうな目を地酒に落とし、弁護士はいうのだった。<br />
<br />
「さっきの男性はどなたですか？」<br />
<br />
　弁護士の気持ちなど彼の眼中にはなかった。<br />
<br />
「ああ、佐藤君だね。隣町の人で美咲さんにご執心でね。毎日のようにここに通ってるんだよ。前に来たときからだから、数年の片思いってやつだね」<br />
<br />
　興味深げにから揚げを口へ放り込んだ探偵は、少し笑っているようにも見えた。<br />
<br />
</h3>]]>
    </description>
    <category>ミステリー小説</category>
    <link>http://powaro.kakuren-bo.com/%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B0%8F%E8%AA%AC/%E3%80%8C%E4%B8%8D%E5%92%8C%E3%81%AE%E7%BE%8E%E3%83%BC17%E3%80%8D</link>
    <pubDate>Mon, 23 May 2016 07:49:48 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">powaro.kakuren-bo.com://entry/17</guid>
  </item>
    <item>
    <title>「不和の美」ー16</title>
    <description>
    <![CDATA[<h3>16<br />
<br />
　春だというのに風はまだ冷たかった。古川栄太郎は持病の腰痛が悪化してきたのか、歩きながら腰に手を添えている。<br />
<br />
　けれどもそんな栄太郎の雰囲気になど微塵たりとも意識を配らせる素振りもなく、探偵、真田春也は見えてきた大きな看板を指さす。<br />
<br />
「あれですね。犯行現場から50メートルというところでしょう」<br />
<br />
　古川が辛そうに背にしていた道を振り返ると、現場となった豪邸の、3階までくっきり見えていた。<br />
<br />
　そこには緑に白字のD建設会社の看板がでかでかと、通行人や車へアピールしていた。<br />
<br />
　敷地内へ入ると、パワーショベルと型の古い泥だらけのトラックが停車して、複数の職人たちがヘルメットを被り、タバコの煙をのぼらせていた。<br />
<br />
　妙な2人が現れたぞ、といわんばかりに探偵と弁護士の取り合わせに、職人独特の重たい視線が向けられた。<br />
<br />
「社長は中ですか？」<br />
<br />
　こうした場ですらも、平然とできるのが真田春也である。<br />
<br />
　職人たちは少し間を置いて、アスファルトへタバコを投げ捨て、長靴のかかとで踏み潰すと、煙を吹きかけるように探偵めがけふく。<br />
<br />
「記者なら帰んな。仕事のじゃまだ」<br />
<br />
　重苦しい声色が若者を突き飛ばす。<br />
<br />
　やはり町中に複数のマスメディアが流入してきたのだろう、町民たちは敏感になっているようだった。<br />
<br />
「わたし達は記者でも、警察でもありません。亡くなった荒木さんの知人のものです。社長に生前の荒木氏の様子をお聞きしたくて訪ねて来たのですが、ご迷惑でしたら後日、日を改めますが」<br />
<br />
　これが大人の対応とばかりに古川弁護士は探偵を一瞥した。<br />
<br />
「弁護士か」<br />
<br />
　と、不意に背後から顔を出した大柄の、黒く焼けた姿を表した男が、弁護士のバッジを見るなり、眉をひそめた。<br />
<br />
「荒木さんの知り合いに弁護士がいるのは知ってる。中へ入んな」<br />
<br />
　無愛想ながらそれがこの建設会社の社長なのがここで、2人の把握の範疇へ入った。<br />
<br />
　そうなると若い探偵に遠慮は一切ない。社長のおおまたよりも素早く、事務所の扉を開けて中へ、ズカズカ入っていった。<br />
<br />
　事務所の中には複数の事務員の女性がパソコンの前に座り、キーボードを叩く音、ペンで書き物をする音が鳴っていた。<br />
<br />
　事務室の、ガラス扉が開く音を耳にして、全員が一斉に顔を上げる。<br />
<br />
　若い男が立っているのを、一瞬見ては警戒心が眉の上に乗っていた。<br />
<br />
　その後ろから社長の大きな影を見ると、事務員たちはそれぞれに、<br />
<br />
「お疲れ様です」<br />
<br />
　と、雇い主へ声を掛けた。<br />
<br />
「お客だ。お茶を入れてくれ」<br />
<br />
　そういうと比較的年齢層の高い事務室の中にあって、もっとも若いと思われる色の白い、女性が事務机から立ち、給湯室の方へと歩いて行く。<br />
<br />
　社長は入り口に立ち、建設会社独特の木材の香りのする建物を見回す若い探偵と弁護士を奥へと促した。<br />
<br />
　仕切り1枚で隔てられた応接スペースには、黒いソファと低めのテーブルが配置されていた。<br />
<br />
　案内される言葉も待たず、どっかりと座った探偵は、少し大きめの声で、<br />
<br />
「お茶じゃなくて、コーヒーがほしいなぁ」<br />
<br />
　なんとも図々しい若者である。<br />
<br />
「それで、話って言うのは？」<br />
<br />
　大柄の社長もどっかりと1人かけのソファに座り、奇妙な2人を見据えた。その目には敵意の光が瞳の奥に見えていた。<br />
<br />
　若者の顔を一瞥してから、自分が最初に口を開くのだろうな、と心中で囁きつつ、社長の日に焼けた社長に視線をむけた。<br />
<br />
「さっきも申しましたが、生前の荒木氏の様子を伺いたくて」<br />
<br />
　そう遠慮気味に言った弁護士の横で、すぐさま探偵が口を挟んだ。<br />
<br />
「生前、荒木氏ともめていたと聞いたのですが、内容をお伺いしたいのですが」<br />
<br />
　ストレートに聞く探偵であった。<br />
<br />
　明らかに社長は不機嫌な態度になる。太い腕を組み、眉間にシワがよった。<br />
<br />
「なにを聞きたいんだ、俺が荒木さんを殺したって言えばいいのか？」<br />
<br />
　嫌味を交えて言う社長。<br />
<br />
「あなたが荒木氏を殺したのであれば」<br />
<br />
　ムッとした社長は眉間のシワをさらに強くした。<br />
<br />
　ひやひやした顔で探偵と社長を交互に見る弁護士は、例のごとくハンカチで汗を拭いながら、震える唇で無礼な探偵の代わりに質問を投げかけた。<br />
<br />
「荒木氏とトラブルがあったとのことですが、どういった内容のトラブルだったのかお聞かせ願えれば幸いです」<br />
<br />
　下からの態度に少し考えるような素振りで、太いもみあげを、ゴム手袋でもはいているよえな指で2度、3度と掻くと、大きな咳払いをした。<br />
<br />
　と、そこへやってきた事務員の女性が一礼すると、弁護士の前に緑茶を、わがままな探偵の前にコーヒーを置き、最後に自らの雇用主の前に、大きな黒い湯のみをおいた。<br />
<br />
　事務員がその場を立ち去るまもなく、すぐにコーヒーに口をつける探偵。<br />
<br />
　そして香りが鼻から消えないうちに、再びぶしつけな口調で質問を投げかけた。<br />
<br />
「金銭的なトラブルだったんですか？」<br />
<br />
　人にものをらたずねる態度とは言えない探偵の様子に、社長の視線は弁護士との対話に向けられた。<br />
<br />
「5年くらい前た。金銭的に苦しくなってない。機材なり土地なりを売ったんだが、それでも倒産寸前まで追い込まれて。そこて荒木さんところへ頭を下げに行ったってわけだ」<br />
<br />
「結果は言わなくてもわかるような気がします」<br />
<br />
　と、同情的な視線で弁護士は軽くうつむいた。<br />
<br />
「怒鳴られたさ。こっちは土下座までしたんだがな、話すら聞いちゃくれねぇ。あげくに、お前が社長で社員が可愛そうだと抜かしやがった。そこまで言われちゃ俺も黙っちゃいられなくてね。その場で怒鳴り合いになったってことだ。この通り声がでけぇからよ、近所の連中に聞かれたんだろう」<br />
<br />
　自分1人の力でのし上がった荒木という老人の半生を知る弁護士にとって、最も理解できる展開であった。<br />
<br />
「幸い、嫁さんの実家から借金できることになって、会社は存続できてるよ」<br />
<br />
　そう皮肉めいた口調で、社長は苦い笑いを浮かべるのだった。<br />
<br />
「今朝、社長さんはどこに居ましたか？」<br />
<br />
　会社の顛末に興味を示さない探偵がアリバイを、淡々と尋ねた。<br />
<br />
「どこってここにいたさ。事務所を開けるのが俺の朝いちの仕事なんでねぇ」<br />
<br />
　そういった時、一瞬だが社長の視線は俯いた。<br />
<br />
　この時、探偵は事務室の事務員たちの顔色が少し変わるのも見て取れた。<br />
<br />
「そうでしたか。では今日はこれで失礼します」<br />
<br />
　そういうなりソファから立ち上がった探偵は、事務所をあとにするのだった。<br />
<br />
　お茶に一口、口をつけてから立った弁護士も、頭を下げ会社を出ていったのであった。<br />
<br />
　人も車も通らない車道を町の中心の方へ向かって歩く探偵。<br />
<br />
　その後ろから血相変えて弁護士が駆け寄ってきた。<br />
<br />
「今のは私にもわかるよ。彼は嘘を言っていた」<br />
<br />
　春が始まったばかりの小さな東北の町に、夕日が沈んでいく。<br />
<br />
　そのギラギラとした夕日に浮かび立つのは、事件への好奇心ばかりが燃える、探偵、真田春也のえみであった。<br />
<br />
　<br />
　</h3>]]>
    </description>
    <category>ミステリー小説</category>
    <link>http://powaro.kakuren-bo.com/%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B0%8F%E8%AA%AC/%E3%80%8C%E4%B8%8D%E5%92%8C%E3%81%AE%E7%BE%8E%E3%80%8D%E3%83%BC16</link>
    <pubDate>Sat, 09 Apr 2016 01:55:49 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">powaro.kakuren-bo.com://entry/16</guid>
  </item>
    <item>
    <title>「不和の美」ー15</title>
    <description>
    <![CDATA[<h3><a target="_blank" href="//powaro.kakuren-bo.com/File/3e7eef3b.jpeg" title=""><img src="//powaro.kakuren-bo.com/Img/1458557066/" alt="" /></a> <br />
15<br />
<br />
　街に酒屋は一軒しかなく、荒木義男邸の近所ということもあって、真田春也と古川栄太郎は最初にその酒屋へ向かった。<br />
<br />
　店頭には販売機が並び、タバコの自販機もあった。<br />
<br />
　入店するとアラームが数度鳴り響き、奥から酒屋独特の紺色の厚手前掛けを着衣した、50代と思われる、腹が出た色黒の店主が、せかせかと出てきて、<br />
<br />
「はい、いらっしゃい」<br />
<br />
　と、威勢よく2人に話しかけてきた。<br />
<br />
　小さい町である。酒屋の店主も町の人間でない2人にすぐに気づいたのか、店の看板商品である地酒の棚の前に、半ば強引に2人を案内すると、土産品としての価値を2人へ弁舌に説くのだった。<br />
<br />
「酒を買いに来たんじゃないんですよ。亡くなった荒木さんについて聞きに来たんです」<br />
<br />
　単刀直入に話すことしかできない探偵である。<br />
<br />
　事件の話はすぐに町の中でも噂になったのだろう、店主の目がそれまでになく、怪訝に細められた。<br />
<br />
「おたくら、警察の人？」<br />
<br />
　そう言いながら怪しげに見る店主はしかし内心では、警察官とは異なる雰囲気と、砕けた格好の探偵を、警察官と思ってはいない。<br />
<br />
「新聞記者なら帰ってよ。」<br />
<br />
　午後3時である。<br />
<br />
　この時間までに数多くの記者が町に溢れていた。狭い町で発生した殺人事件。小さい、交通事故すらも起こらない町での殺人事件であるから、当然のことながらマスメディアは飛びついた。<br />
<br />
　僅かな時間の間に、放送各局のテレビカメラが町に入り、新聞記者、カメラマンが普段は人通りもまばらな商店街をうろついていた。<br />
<br />
　中には留守の家の裏へ回り、窓から民家を覗く者、交通量が少ないとは言え、商店街のど真ん中に脚立を置いてカメラで撮影する者など、協力的になれと言うほうが難しく、この酒屋に出入りした記者たちに、何度も同じ質問を問いかけられて、店主も苛立ちを隠せずにいた。<br />
<br />
「そうじゃないんですよ。何度かこちらからお酒を買ったことがあるんですが、覚えていらっしゃらないですかねぇ」<br />
<br />
　無礼な若造の言葉を取り繕うように、弁護士が顔を前へ突き出す。<br />
<br />
　黒く塗ったように顔が焼けている店主が、思い出すかのように目を細くして弁護士の顔をよくよく見ていると、ハッとした様子で目を見開いた。<br />
<br />
「古川さんかい？　荒木さんところによく来てた弁護士の」<br />
<br />
「そうです。古川です」<br />
<br />
　再び笑みを浮かべた店主は、残念そうに弁護士の手を取って握手する。<br />
<br />
「とんだ災難だったね。誰がこんなことをしたのか。信じられないよ」<br />
<br />
　店主が何度も弁護士の手を握って上下させるのを横で見ていた探偵はしかし、そうした労いの言葉などをここへ求めてはいなかった。<br />
<br />
「記者の方が何度となく伺ったと思いますが、俺たちも事件を解決するために町の人に聞き込みをしているんです。協力を願います」<br />
<br />
　というその表情には、申し訳なさそうな表情も、感情的な断片すらも見ることはできず、ただ機械的に自らが求める情報を引き出そうと、便宜上、口先だけで発言していた。<br />
<br />
　店主が怪訝そうに若者を一瞥してから、古川弁護士を見る。<br />
<br />
　その申し訳なさげな笑みに、店主は仕方がないな、とばかりに渋々、頷いた。<br />
<br />
　間髪を入れずに探偵は弁護士との手も離れないうちに、質問を投げかけた。<br />
<br />
「荒木義男氏という人はどういう人だったんですか？」<br />
<br />
　上を見上げ少し考える店主は、少し話すのに戸惑いを抱えている様子だった。<br />
<br />
「いいんですよ。真実を話してください」<br />
<br />
　そう弁護士に促され、ようやく酒屋の店主は腕組みをして口を開いた。<br />
<br />
「いい人とは必ずしも言えなかったねぇ。なんて言えばいいんだか、町でも孤立してるっていうのかなぁ。近所の集まりには出ないし、この辺で回してる回覧も見てるんだかどうだか、来ているヘルパーさんに回してもらってたみたいだし、あれだけ大きなお屋敷に住んでるだろう？　あそこからほとんど姿を見せないんだから、こっちだって気味悪く思うのは当然だろう？」<br />
<br />
　探偵はふと古川弁護士の横顔を見ると、自らの事でもないのに、申し訳なさそうに頭を下げていた。<br />
<br />
　そんなことを気にする探偵でもなく、続けざまに質問を投げかけた。<br />
<br />
「トラブルを抱えてるという噂などは聞いていませんか？」<br />
<br />
　店主は今度、首を横に倒し、頷きながら考え込んだ。<br />
<br />
「うーん、そういえば何年か前だったか金銭面でのトラブルがあったってのは聞いた覚えがあるなぁ」<br />
<br />
「誰とですか？」<br />
<br />
　間を置かず探偵はさらに引き出そうとする。<br />
<br />
「この町のD建設の社長の伊美徹とだよ。なんでも会社の経営がうまくいってなくて、借金を頼みに来てたらしい。もちろん荒木さんのことだから、すぐに追い返されたらしいけど、あとあとで荒木さんを恨んでるって話してたらしいよ。まぁ、噂ですけどね」<br />
<br />
　有力情報が探偵の脳内に石に刻まれた文字の如く、深く入り込み、それが興奮の度合いを高くしたのだろう、探偵の目は見開かれていた。<br />
<br />
「犯行時間の早朝ですが、怪しい人を見かけませんでしたか？」<br />
<br />
　探偵の口調は自然と口早になっていた。<br />
<br />
「配達の準備をしてたけど、特に気づかなかったなぁ。そんな時間から外に出てる人間なんて滅多にみないからなぁ」<br />
<br />
「配達ですか？」<br />
<br />
「ああ、美咲ちゃんのところにだよ。毎朝早朝に届ける手はずになっててね」<br />
<br />
　探偵は引っかかりをすぐに見つけると、そこを掘り下げた。<br />
<br />
「犯行時刻、美咲さんは店に居たんですか？」<br />
<br />
　これには店主も不機嫌な顔に豹変した。<br />
<br />
「当たり前だろ！　美咲ちゃんを疑ってるのか！」<br />
<br />
　そういうと店主は組んでいた腕を振り払い、手首をぶらぶらとさせた。<br />
<br />
「帰ってくれ。もう話すことはない。商売の邪魔だよ」<br />
<br />
　と、２人は追い返されるように店から出された。<br />
<br />
「君って男は美咲さんまで疑っているのかね」<br />
<br />
　古川が困った顔をすると、<br />
<br />
「探偵ですからね。それよりもD建設へ向かいましょう。トラブルの具体的な情報が欲しいです」<br />
<br />
　飄々と若い探偵は商店街を歩いて行く。<br />
<br />
　弁護士は彼と聞き込みを終えた時、町の人間が全員、敵になっているかもしれないという考えに、溜息を漏らすのだった。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
</h3>]]>
    </description>
    <category>ミステリー小説</category>
    <link>http://powaro.kakuren-bo.com/%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%BC%E5%B0%8F%E8%AA%AC/%E3%80%8C%E4%B8%8D%E5%92%8C%E3%81%AE%E7%BE%8E%E3%80%8D%E3%83%BC15</link>
    <pubDate>Wed, 24 Feb 2016 04:15:23 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">powaro.kakuren-bo.com://entry/15</guid>
  </item>

    </channel>
</rss>