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ミステリー小説、書く!!!

ミステリー小説です。 毎週1回のペースで更新しますので、良かったら読んで感想をください。

スキマ時間にはビジネス書を「聴く」。オーディオブックのFeBe

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「不和の美」ー5



 弁護士の古川は自分が手にしている情報を、探偵に見せるようにゆっくりと語り始めた。

「義男氏は朝が早いんだ。朝の5時には起床してパソコンを操作するんだよ。あの年齢には珍しくてね、インターネットで世界のニュースや投資情報をチェックするのが日課だったんだよ。
 今朝も新聞配達員が書斎に電気が灯っているのを見ているから、5時過ぎにはまだ生存していたと考えられる」

 タクシーの外を町の真ん中を流れる河が続くのを探偵は見ながら、頭の中でメモをとるように、耳は鋭く弁護士の声を拾い上げていた。

 弁護士は運転手の耳もまた大きくなっている事実に配慮してだろうか、少し声を潜めながら説明を続けた。

「午前8時、義男氏は隣町のヘルパー派遣会社に朝食の支度を依頼していてね。毎朝同じ時間にヘルパーは来ていたんだ。
 名前は岡本美枝子さん。わたしも彼女とは顔見知りでね。電話で話しを聞いたんだが、いつものように預かっている合い鍵で玄関を開けて声を掛けたそうなんだ。義男氏は返事をしない。偏屈だからね。だから美枝子さんはいつものように台所へいったんだがそこで異変に気づいたそうなんだ。
 ご飯だけは自分の炊きかけんがあるから必ず自分で炊飯器で炊飯するのが日課のはずが、今朝は炊飯器にスイッチはおろか中が空だった。おかしいと思って書斎に声をかけたが返事がなくて――」

 そこから先は弁護士が言う前に探偵が田舎の寂しい風景から振り向きざまに答えた。

「遺体を発見した。つまり午前5時~午前8時の3時間の間に被害者は殺害された訳ですね、わざわざ織部焼きで」

 若い探偵は凶器に対する引っかかりがぬぐえなかった。

 弁護士は白髪交じりの頭を立てにコクリと振った。

「ではまず、ヘルパーの岡本さんに話を聞きに行きましょう」

 ホテル方面とは真逆の方向であるにもかかわらず、探偵は平然と言った。

「運転手さん、隣町まで行ってください」

 代金を支払うのは古川弁護士であるから、白髪交じりの眉には不快感が乗っていた。

 タクシーは野菜の直売所の駐車場で方向を変え、来た道を隣町へ再び戻ったのだった。


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プロフィール

HN:
富士島
年齢:
39
性別:
男性
誕生日:
1986/01/06
職業:
介護職
趣味:
小説、漫画、映画、PC、スマホ

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