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ミステリー小説、書く!!!

ミステリー小説です。 毎週1回のペースで更新しますので、良かったら読んで感想をください。

スキマ時間にはビジネス書を「聴く」。オーディオブックのFeBe

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「不和の美」-7



 田舎警察の主な業務として、巡回と公安委員会の職務がある。つまり免許証の更新手続きを行う業務だ。

 真田春也、古川栄太郎がタクシーで乗り付けた時、普段は運転免許証の更新手続き、講習会でいっぱいになる駐車場に、新聞記者、テレビ局のカメラが並んでいた。

 静かな町で起こった殺人事件。全国的に注目を集めるのは当然のことである。

 時刻は昼近くになろうとしている。事件発生から数時間、すでに情報はマスコミに滴がこぼれるような状態から、ホースが途中でちぎれ、水が溢れるかのように、報道へと坂を転がり落ち始めていた。

 タクシーから降りた2人。玄関前には新聞記者が殺到し、その後ろにテレビカメラを抱えた男たち、マイクを持ったレポーターの姿があり、まるで城壁のように駐在所へ入る脚を阻まれていた。

「ついさっきですよ、昭雄氏が連行されていったのは」

 マスコミの陣営から1人離れ、2人に近づいてきた小男が、栄太郎を見上げて口の端を片方上げた。

「貴方が真田春也さんですか。想像よりもずいぶんとお若いですな」

 と、次は探偵を見上げて小男はおもむろに名刺入れを上着の内ポケットから出して、名刺を春也に手渡した。

 そこにはN新聞社記者飯島勝と書かれていた。

「古川さんに電話をしたとは、わたしですよ。いち早くお2人に事件の詳細を伝えようと思いましてね」

 また口の端を片方だけ上げて、ほくそ笑む。

「犯行時間のアリバイがなかったと?」

 少し気味の悪い記者の事など眼中にない春也は、ベクトルを向けている事件に事に関しての質問を、いきなり新聞記者へ投げつけた。

 ずけずけと質問することで、警察や古川弁護士からも嫌われている飯島勝も、さすがに面食らった顔をした。が、すぐにまたほくそ笑み答えた。

「聞いていましたが、頭は事件のことでいっぱいのようで・・・・・・。
義男氏が殺害された時刻、昭雄氏は自宅に居なかったそうで。彼の自宅は殺害された義男氏の豪邸からさほど離れていないところに建っていましてね。奥さんはその時間帯、主人が居なかったと証言しているんですよ。
ましてや親子の仲はよくないですからな。疑われるのは当然といったところでしょう。金銭トラブルでの父親殺害。これで間違いないですな」

 聞いてもいないことをズケズケと憶測でいう記者に、憤慨した様子で弁護士は強く抗議した。

「昭雄くんはそんな人じゃない。いい加減なことを言わないでくれ」

 一方その横では探偵が事件の概要が見えてきたことに、笑みを浮かべていた。

 その時、マスコミの陣営で複数の声が上がった。

「おっと、何か動きがあったな」

 小男はそそくさとネズミのようにまた、自らの仕事現場へと戻って行ってしまった。

「金銭トラブルですか?」

 古川に探偵は質問を投げかける。その瞳は好奇心で縁取られていた。

 多少言いにくそうに、古川弁護士は白髪交じりの頭を縦に軽く振った。

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プロフィール

HN:
富士島
年齢:
39
性別:
男性
誕生日:
1986/01/06
職業:
介護職
趣味:
小説、漫画、映画、PC、スマホ

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