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ミステリー小説、書く!!!

ミステリー小説です。 毎週1回のペースで更新しますので、良かったら読んで感想をください。

スキマ時間にはビジネス書を「聴く」。オーディオブックのFeBe

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「不和の美」-10

10

 昼時になりタクシーで町へ戻った2人は、町に二軒しかない食堂の内の1つ、商店街の中程にある小さい店構えの、おばちゃん2人で軽々する店の、一番端っこのテーブル席へ腰掛けた。

 元は白だったのだろう茶色い壁に張り出された、マジックの手書きメニューもやはり黄ばみがひどい。

「ここはなかなかおいしい店でね。君も好きなものを注文するといい」

 古川はそういうと、すでに決まっていたのだろう、小さいカウンターの奥で、先客、工事関係者の一団らしい男たちの食事を作っている、小さく丸まった白衣の背中2つに声を掛ける。

「鯖味噌定食を1つ」

 フライパンを振る手を止められないのか、あいよ、と大きな声は返ってきたものの、メニューをメモする仕草などは見られない。

テーブルの端に置かれた、お品書きの方に眼を通した真田春也は、一通り見ると同じくカウンターの背中へ声を発した。

「僕は天ぷら蕎麦を」

 同じくおばちゃん2人の声が返ってくる。

 水は入り口付近の色が焼けたサーバーからセルフで入れるのだろう、春也は立ち上がると自分の水だけを手に戻り、弁護士の顔を見やった。

「犯行時間、午前5時から午前6時というのは、この町の人たちにとっては、どういった時間帯になりますか?」

 事件の話しか興味の無い探偵が水を一口飲んで、質問をする。

「田舎の人間は起きるのは早いが、午前5時ともなると、家の中で起きていても、外へ出る人間は限られてくるだろうねぇ。
 農作業をする老人たちならばあるいは外出しているかもしれないが」

 と、弁護士は答え、自らも水を取り立ち上がった。

 唇に指先を這わせ、考え込む探偵。

「被害者はどんな方だったんですか? やはり犯人を探すには被害者の人柄を知る必要があります」

 厨房でフライパンが油で弾ける音がいっそう大きくなる。

 弁護士は眼鏡をハンカチで拭きつつ、少し沈黙して、脳内で被害者の人格を整理してから口にした。

 人間1人を簡単に説明するなど、難しいことである。

「さっきも言ったように頑固な人でね。自分が決めたことは貫く人だった。書斎もそうさ。自分以外は絶対に入れない。わたしすらも数度しか入ったことがないくらいだよ」

「交友関係の方はどうですか?」

 探偵は即座に問う。

「仕事関係は幅広かったね。それこそ日本全国に知っている人がいると言っても過言ではないほどに。しかし友達という側面から見ると、けして広くはなかった。自分の本音を口にできる人は居たかどうか」

「被害者は私生活では孤独な人間だった。骨董品に興味を持ち、書斎で常に自らの趣味に没頭する。なるほど・・・・・・」
 
 唇を触りまた探偵は考え込んだ。

「肉親は事情聴取を受けている息子の昭雄氏だけですか?」

「いいや、近い肉親がもう一人、町にはいるよ」

 そう答えたところへ注文が運ばれてきた。

「義男氏の亡くなった妹夫婦の1人娘で筒井美咲さんが町で居酒屋を経営している」

 弁護士は割り箸を取り、彼に渡しながら言う。

「ではその人のところへ食べたら向かいましょう」

 










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プロフィール

HN:
富士島
年齢:
39
性別:
男性
誕生日:
1986/01/06
職業:
介護職
趣味:
小説、漫画、映画、PC、スマホ

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