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ミステリー小説、書く!!!

ミステリー小説です。 毎週1回のペースで更新しますので、良かったら読んで感想をください。

スキマ時間にはビジネス書を「聴く」。オーディオブックのFeBe

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「不和の美」ー3



 町には1つだけ宿泊施設がある。バブルの頃に建てられたホテルである。当時の町長が林業の町から観光の町へと産業をシフトしようとして町が貯蓄していた炭鉱時代の収入金で建設したのである。

 だが山ばかりの町に観光地があるはずもなく、登山シーズンならば観光客も訪れたであろうが、シーズンオフには閑古鳥。結果として町営ホテルは民営化され、今ではその一部が委託された隣町の企業が宿泊施設として、細々と糸を紡ぐように経営していた。

 けれどもそこへ行く手段もまた、町にはない。車がなければ移動手段すらない小さな町では、商店街から宿泊施設までの7キロをタクシーで移動するのである。

 ホテルへいったん戻ることとした探偵の真田春也と弁護士の古川榮太郎は、車中で事件についての話をしていた。

 もちろん運転手もこの町の人間であるから、早朝に起こった町の実力者の死を十分に把握し、聞き耳を立てていた。

 2人はそれを知りながらも話を続ける。

「つまりだよ真田君。わたし達は事件の部外者なのだから、ああいった行動は困るんだよ。事件現場に土足であがるなんて、君も探偵ならば現場を荒らすのがいかに重大な罪か分かるだろう」

 唾をとばしながら弁護士はまくし立てた。

 2人のこの町に来たいきさつは、事件を解決するためではない。古川栄太郎と昔からの知人である被害者荒木義男は、骨董品のコレクターとして様々な歴史的品物を収集していた。また古川の若い知人たる真田春也もまた、歴史を得意とする人物であり、2人の共通の趣味である歴史について、語る場をつねづね設けたいと考慮していた古川弁護士は、今回その機会を得てはるばる田舎の小さな町までやってきたのではあるが、現実は奇なりである。

「分かっていますよ。でも古川さんの知人が殺されたんですよ。このまま知らない振りもできないでしょう?」

「それはそうだがねぇ・・・・・・」

 事実、古川の心中は辛い物があった。古川弁護士は亡くなった荒木義男に恩義があったからだ。

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プロフィール

HN:
富士島
年齢:
39
性別:
男性
誕生日:
1986/01/06
職業:
介護職
趣味:
小説、漫画、映画、PC、スマホ

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