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ミステリー小説、書く!!!

ミステリー小説です。 毎週1回のペースで更新しますので、良かったら読んで感想をください。

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「不和の美」-4



 古川栄太郎と殺害された荒木義男との出会いは40年も前に遡る。

 当時、弁護士として東京の小さな事務所で働いていた栄太郎は、保険金詐欺事件を担当していた。高齢の夫が亡くなり多額の保険金が20代の妻へ入ったのである。夫は浴室で滑って頭を強打。脳内出血で亡くなった。

 だが高齢の夫は1人ではけして風呂に入らない。毎日訪問するヘルパーの助けを借りて入浴していた。しかし事件は夫の事故死として保険金は下りた。

 これに納得のいかなかった長男が父親は殺害された、として後妻である20代の妻を訴えた。その弁護士として長男側に着いたのが栄太郎だった。

 栄太郎は夫が1人で入浴できない事実、妻がその日、家に居ながら夫が風呂に入るのを止めなかった事実などを法廷で明らかにした。

 けれども事件は証拠不十分で彼は敗訴した。栄太郎にとって若い頃の苦い経験である。

 この事件を偶然にも知った当時40代だった荒木義男が知り、彼を自ら訪れ自分の顧問弁護士として雇ったのである。

 栄太郎が担当したこの裁判、誰が見たところで証拠不十分なのは分かっていた。それでもこの裁判を受けた若い弁護士の意気込みに荒木義男はえらく感動した。

 生前、酔うと義男はよくこの話をしていた。

 それから40年の付き合いである。殺害された荒木義男の死を誰よりも悲しみ、誰よりも犯人の確保を熱望するのは栄太郎自身である。だから真田春也を事件から遠ざける口ぶりであったが、タクシーの後部座席で被害者に恩義のある弁護士は事件の概要を口にした。


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プロフィール

HN:
富士島
年齢:
39
性別:
男性
誕生日:
1986/01/06
職業:
介護職
趣味:
小説、漫画、映画、PC、スマホ

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